女性労働関係 平成17年度 女性管理職の育成と登用に関する調査

平成17年6月 財団法人21世紀職業財団

I アンケートの概要

1. アンケートの目的

少子高齢化が進む中で、各企業の女性労働者の活用の必要性が云々されているが、実際に企業における女性の活用と登用の状況を把握するとともに、その一つの指標である女性管理職と女性役員の状況について把握することを目的としアンケートを実施した。

2.アンケートの対象

(1)対象業種

  全産業(農林業を除く)

(2) 対象企業数

  市場上場企業及び店頭銘柄等を含む約3400社|
  東京、大阪、名古屋(1部及び2部上場企業)
  地方上場、店頭銘柄、生命保険、損害保険

(3) 記入担当者

  人事労務担当者

3.調査方法

通信調査

4.調査時期

平成17年4月

5.回収状況

回収数 409社

回収率 12.0%

II アンケート結果の概要

1.アンケート回答企業の状況

(1)産業別の状況

製造業が48.9%と半数近くを占め、次いで卸売・小売業(17.6%)、金融・保険業(8.8%)、サービス業(7.8%)の順となっている。上記4産業以外の産業は全体で16.6%である。

(2)企業規模別の状況

企業規模別では、1000人~4999人規模が34.2%、次いで300人~999人規模が31.1%、300人未満が24.9%となっている。5000人以上の規模は9.8%である。

2.これからの人事戦略

(1) これからの人事戦略の重視度

これからの人事戦略としての「女性社員の活用と登用」を重視するのは大規模企業に多く、企業規模による差が大きい。

これからの企業の人事戦略として企業が「重視する」としているのは、「評価における公平性・納得性の確立」(51.6%)が最も多く、次いで「多様な人材の確保」(32.3%)、「業績評価の拡大」(30.6%)である。

「重視する」と「やや重視する」を加えてみても、「評価における公平性・納得性の確立」(85.3%)、「多様な人材の確保」(75.6%)、「業績評価の拡大」(72.2%)の順であり、これら3つの人事戦略は7割強の企業が今後重要と位置づけている。

「女性社員の活用及び登用」は、上記の3つの人事戦略に次ぐもので「重視する」(28.9%)、「やや重視する」(39.9%)を加えると68.8%となる(第1図)。

企業規模別に「女性社員の活用及び登用」についてみると、5000人以上の大規模企業では「重視する」とする割合が67.5%と多いのに対し、300人未満の中小規模企業では19.6%に過ぎない。

一方、「現状維持」とする割合は5000人以上規模では7.5%に過ぎないのに対し、300人未満の規模では45.1%となっている。

「女性社員の活用と登用」は、企業規模による差が大きいが、大規模企業ではその重要性が認識されているといえよう(第2図)。

graph01.jpg

graph02.jpg

(2)「女性社員の活用及び登用」を重視する理由

女性社員のやる気を引き出し、その力を十分発揮してもらうことが必要であると考えられている。

「女性社員の活用及び登用」について「重視する」と「やや重視する」と回答した企業の重視する理由をみると、「仕事上、男女に能力差は認められないから」(69.0%)、「女性にその能力を十全に発揮してもらうことが必要だから」(65.5%)、「女性社員のやる気を上げることが不可欠だから」(58.0%)の順となっている。「仕事上男女の能力差はない」という認識、企業の生産性の上昇や人事管理上「女性社員のやる気を上げることが不可欠」という考え方が広まっているといえよう(第3図)。

企業規模別にみると、「仕事上、男女に能力の差は認められないから」と「女性にその能力を十全に発揮してもらうことが不可欠だから」の理由は企業規模により大きな差はみられない。一方、「女性社員のやる気を上げることが不可欠だから」は5000人以上の大規模企業では75.7%が重視する理由としているのに対し、300人未満の中小規模企業では45.5%にすぎない。規模が大きい企業ほど、既にいる女子社員のやる気を上げることが重要と考えている。

graph03.jpg

(3)「女性社員の活用及び登用」のための取組

女性社員の活用及び登用のため積極的に取り組むのは「女性の職域の拡大」と「女性管理職の増加」

「女性社員の活用及び登用」を「重視する」と「やや重視する」と回答した企業に対し、その具体的な取組を聞いたところ、積極的に実施する取組は「女性の職域の拡大」(29.2%)、「女性管理職の増加」(27.8%)、「男性社員の意識改革」(22.4%)、「研修機会の増加」(20.3%)の順となっている。

「男女社員の退職率を同程度とする」(3.6%)、「全社員に占める女性比率の上昇」(9.3%)、「女性の勤続年数の伸長」(9.3%)といった取組を「積極的に実施する」とする企業の割合は少ない(第4図)。

graph04.jpg

(4)「女性社員の活用及び登用」を妨げている理由

女性の活用及び登用を妨げている理由は「出産・育児を契機に退職すること」が多い。

女性の活用と登用を妨げている理由として、「女性は出産・育児を契機に退職する人が多いこと」(42.8%)、「女性採用人数が少なく全体に占める女性の割合が少ないこと」(34.7%)、「女性を積極的に育成しようとする意識に欠けること」(29.3%)、「女性がつく職種が限定されていること」(24.9%)、「残業が多いこと」(22.2%)の順となっている。

企業規模別にみると、「女性は出産・育児を契機に退職する人が多いこと」と「女性の採用人数が少なく全体に占める女性の割合が少ないこと」とする割合は企業規模による差は少ないが、「女性を積極的に育成しようとする意識に欠けること」を理由とする企業の割合は企業規模が大きいほど多く、反対に「女性がつく職種が限定されていること」を理由とする企業は企業規模が小さいほど多い(第5図)。

この調査からは、出産・育児期に退職しないで子育てが出来る環境が整えば女性の活用が進むといえる。

graph05.jpg

3.女性管理職の状況

女性管理職のいない企業が多いが、「主任・係長相当職」では女性管理職の割合が10%を超える企業が22.7%に達している。

女性管理職が全くいない企業をみると、「係長・主任相当職」で19.1%、「課長相当職」で45.5%、「部長相当職」では79.0%に達している。

女性管理職がいる企業においても、女性管理職の比率は低く、女性の割合が10%を超えるのは、「係長・主任相当職」で22.7%、「課長相当職」で5.4%、「部長相当職」では3.2%となっている(第6図)。

graph06.jpg

4.女性管理職の比率の増減状況

女性管理職の比率が5年後増加するとする企業は半数を超えるが、増加のための数値目標を設定している企業は少ない。

(1) 5年前との比較

課長相当職以上の女性管理職を5年前と比較すると、「変わらない」とする割合が58.2%と半数強を占めているが「増加」(13.2%)と「やや増加」(22.0%)が35%である。

企業規模別にみると、5000人以上では「増加」(32.5%)と「やや増加」(42.5%)で75.0%となっているが、5000人未満では「変わらない」が多くなっている。

(2) 数値目標の設定状況

女性管理職を増加させるための数値目標を設定して「いる」のは4.4%にすぎず、94.1%は数値目標を設定していない。

企業規模別にみると、5000人以上で数値目標を設定している割合が20.0%に達している。

(3) 5年後の増減状況

5年後の女性管理職の増減状況は「増加」(12.7%)、「やや増加」(43.8%)で、「増加」と「やや増加」の割合が「変わらない」(38.9%)より上回っている。

(4) 女性管理職比率が増加しない理由

5年後の女性管理職の比率が「変わらない」または「減少」、「やや減少」と回答した企業は、女性管理職が増加しない理由として、「職務経験の少ない人が多 い」(54.7%)、「判断力・企画力・折衝力等が不足している」(34.7%)、「勤続年数が不足している」(30.6%)をあげる割合が多い(第7図)。


graph07.jpg

(5) 女性管理職登用に当たって女性がクリアし難い条件の有無

女性を管理職に登用する場合、女性がクリアし難いと考えられる条件は「ない」とする割合が68.2%、「ある」とする割合は17.4%である(第8図)。

graph08.jpg

女性を管理職に登用するに当たって女性がクリアし難い条件が「ある」と回答した企業の自由記載から、いくつかの条件(理由)を拾ってみると、以下のとおりである。

    (仕事と家庭の両立)
  • 育児期間において、育児休業や短時間勤務、その間の残業や深夜業などの制限があるので、この期間においては課長職以上への登用は難しくなる。(製造業、5000人以上)
  • 結婚もしくは出産による退職者が殆んどで、勤続年数が短いため必要な知識が習得できない。(製造業、300人~999人)
  • 昇格年次の数年前から育児休業、育児短時間勤務に入る者が多く、昇格に必要なレベルの評価を得ることが難しい。(製造業、1000人~4999人)
  • 育児を理由とする退職、夫の転勤による退職が多い。(製造業、1000人~4999人)
    (転居を伴う転勤)
  • 転居を伴う転勤、転勤に伴う長時間通勤が女性は困難だから。(製造業、300人~999人)
  • ポストが空いても転勤が出来ないため、そのポストに配置できない。(製造業、1000人~4999人)
  • 転勤が困難、女性であることで特別扱いは出来ない。(製造業、1000人~4999人)
  • 特に海外勤務が必要な場合の転勤が女性は困難(サービス業、300人~999人)
    (就業時間・就業環境等)
  • 夜間就業があり、女性は夜間就業につきたがらない。(卸売・小売業、5000人以上)
  • 残業、イレギュラーな勤務時間への対応など勤務時間に適応しがたい。(運輸業、300人~999人)
  • 現在の管理職の業務量は多く、残業が多くなる。(製造業、300人~999人)
  • 長期海外出張等、海外の厳しい環境を考えると女性には向いていない。(製造業、1000人~4999人)
    (女性の経験不足)
  • 自分より年長の部下に対する指導力の不足(製造業、300人~999人)
  • 女性のつく職種が限られている。ライン業務(工事)の経験がない。(建設業、1000人~4999人)
  • マネジメント全般に係わる業務知識や経験の蓄積がない。(金融・保険業、300人~999人)
  • 警備業務未経験者では管理職につけない。(サービス業、5000人以上)
  • 判断力、決断力、折衝力の不足(金融・保険業、1000人~4999人)
  • 広い視野で物事をみる経験が少ない。(サービス業、300人未満)
  • 社員の高齢化により部下に年長者を持つことになり、まとめて行けるか不安(製造業、1000人~4999人)
    (女性の意識)
  • 女性の職業意識や責任感に欠けるところがある。(製造業、300人~999人)
  • 女性の意識が家庭中心である。(製造業、300人未満)
  • 本人のモチベーションの問題(製造業、1000人~4999人)
  • 課長相当となるためには、事務職から現場の管理が出来る技術職になる必要がある。女性社員の多くは職域拡大や責任が増加することを望まない。サポート的な事務職としての課長相当の仕事はない。(建設業、300人未満)
  • 女性は管理業務よりマイペースで仕事をする人が多い。(建設業、300人~999人)
    (職場風土)
  • 社内風土改善の遅れ(卸売・小売業、5000人以上)
  • 中間管理職の無理解(製造業、1000人~4999人)
  • 顧客の理解が得難いこと(金融・保険業、1000人~4999人)
  • 女性自身よりも経営・マネジメント側に課題がある。(製造業、1000人~4999人)
  • まだまだ旧い男性管理職の意識(製造業、1000人~4999人)

(6) 女性管理職を増加させるための取組

諸基準の明確化の取組を行なう割合が多く、ポジティブ・アクションのための女性を対象とした取組をする割合は少ない。

女性管理職を増加させるための取組の実施状況を見ると、「積極的に取り組んでいる」と「取り組んでいる」とする割合の多い取組は、「評価・査定基準の明確 化」(59.6%)、「昇進・昇格基準の明確化」(55.5%)が多く基準の明確化の必要性が意識されている。一方、より積極的に女性管理職の増加を目的 とする措置としては、「幅広い仕事上の経験を意図的に与える」は39.1%に達しているものの、「モデル(模範)となる女性社員の育成」(21.6%)、 「管理職候補の女性社員の個別育成」(11.3%)、「女性の管理職候補者を対象とした研修」(8.8%)にすぎない(第9図)。

graph09.jpg

(7) 女性管理職が増加した又は増加すると予測した企業の取組

女性管理職が増加した企業及び増加すると予測する企業は、「経営層からの意思表示」か「幅広い仕事上の経験を意図的に与える」ところが多い。

5年前に比べ、及び5年後に、女性管理職の比率が「増加」及び「やや増加」と回答した企業において、「積極的に取り組んでいる」と「取り組んでいる」と回答した女性管理職を増加させるための取組項目は、「評価・査定基準の明確化」、「昇進・昇格基準の明確化」、「幅広い仕事上の経験を意図的に与える」、「自己申告制度の活用」、「各種研修など教育機会への女性社員の参加の奨励」の順となっている(第10図)。

また、女性管理職を増加させるための取組として、「積極的に取り組んでいる」及び「取り組んでいる」と答えた企業と比較して、女性管理職の増加を予測した企業においては「経営層からの意思表示」「幅広い仕事上の経験を意図的に与える」「モデルとなる女性社員の育成」に取り組む割合が高いという特徴がみられる(第9図第10図)。

graph10.jpg

5. 女性役員の状況

女性役員がいるとする企業は8.3%にすぎない。そのうち1人が79.4%を占めている。

(1) 女性役員の有無

女性役員が「いる」企業の割合は8.3%、「いない」は91.7%である。女性役員がいると回答した企業のうち79.4%が1人である(第11図)。


graph11.jpg

(2) 女性役員の経歴

女性役員の経歴を見ると、「創業者、大株主系」が47.1%と半数近く、次いで、「社員からの登用」(32.4%)、「社外役員」(23.5%)である(第12図)。

graph12.jpg

(3) 役員に選ばれた理由

「社員からの登用」と「ヘッドハンティング等による外部からの登用」された女性が役員に選ばれた理由は、「これまでの経験、キャリアを考慮した」が83.3%と多く、ついで「能力が高いから」が41.7%、「会社の利益に著しく貢献した」が25.0%となっている(第13図)。

graph13.jpg

(4) 女性役員の担当業務

女性役員の担当業務をいくつか拾ってみると、「監査役」が多い。その他、経営全般に携わっていたり、専門知識を活かしたマーケッティングや経理担当などの例が見られた。

(5) 役員になるためのキャリアパスの例

役員になるために必要とされる典型的な経歴(キャリアパス)について、自由記載の中からいくつか拾ってみると以下のとおりである。

    (製造業)
  • 複数の職務経験(転勤あり)→課長(過年度の成績考慮)→複数の課長ポストの歴任(転勤あり)→部長職→本部長職→執行役員(製造業、5000人以上)
  • 生産管理→営業→他管理部門(経理等)→役員(製造業、1000人~4999人)
  • 社業の発展に結びつく目覚しい成果を挙げ、マネジメント上も他の社員の見本となる実績を残した(製造業、1000人~4999人)
  • 異職種の経験→海外勤務の経験→事業責任者→業績への貢献(製造業、5000人以上)
  • 3つの各地域に分散している事業所、3つの仕事(例えば営業、経理、総務など)を経験することが条件(製造業、1000人~4999人)
  • 外部からの役員招聘(製造業、1000人~4999人)
    (卸売・小売業)
  • フロアー長→店長職経験者→バイヤー経験者→事業部長経験者→役員(卸売・小売業、5000人以上)
  • 一般職→係長→課長→部長→執行役員→取締役(卸・小売業、300人~999人)
  • 典型的な例はないが、本社の総括マネージャー(部長クラス)から役員に登用されるケースが多い。(卸売・小売業、5000人以上)
  • 総合職→チームリーダー→マネージャー→役員(卸売・小売業、300人~999人)
    (その他の産業)
  • 入社→工事現場の経験→工事課長→工事部長→執行役員(建設業、1000人~4999人)
  • 一般社員→スペシャリスト・エキスパート→グループ長・事業部長→役員(情報通信業、300人~999人)

(6) 女性役員が誕生しにくい理由

女性が役員になるためのキャリアパスを経験するに当たりネックとなる条件や理由について、自由記載からいくつか拾ってみると以下のとおりである。

  (製造業)

  • 業績に与える貢献度が最大評価となり、役員候補者は営業職にほぼ限定され、女性で営業職経験者がいない。(製造業、300人未満)
  • キャリア育成に必要な職務は複数事業所に分散しており、転勤を伴う職務ローテーションが多いこと(製造業、5000人以上)
  • 深夜業、休日出勤等就業時間が不規則なこと(製造業、1000人~4999人)
  • 支店長、製作所長、支社長を経験しなければならないが地方への転勤がさけられないこと(製造業、1000人~4999人)
    (その他の産業)
  • 工事現場の職場環境(残業が多い、女性を受け入れ難い職場風土)(建設業、1000人~4999人)
  • 製造現場や海外の関係会社への出向の経験があることが望ましいと考えられていること。(サービス業、300人未満)
    (トップ等の意識)
  • 社長自身の意識改革(サービス業、1000人~4999人)
  • 管理職の女性登用に対する意識改革(製造業、300人未満)
  • 経営層の人材育成(男女を問わない)に対する意識の欠如(建設業、300人~999人)
  • 受け入れ先で女性を好まない。(サービス業、300人未満)
    (女性の意識・能力等)
  • 休日、深夜もいとわないと言った女性に意欲の欠如、転勤したくないと言った女性の意識(金融・保険業、300人~999人)
  • 女性の向上心が弱いこと(卸売・小売業、300人未満)
  • 女性社員自らが補助業務に満足する傾向が強いこと(製造業、300人未満)
  • セキュリティ業務を統括できる能力が不可欠なため女性には難しい。(サービス業、5000人以上)
  • 工場・現場の統括職務の遂行能力が問われること(製造業、1000人~4999人)
  • 入社→工事現場の経験→工事課長→工事部長→執行役員(建設業、1000人~4999人)
  • 専門性とマネジメント力を強化する必要があること(情報通信業、300人~999人)
  • 女性役員の前例がないため相談できる人が周りにいない。仕事と家庭の両立、本人の頑張りと周囲の理解が不可欠(製造業、300人~999人)
  • 建設業では、直接現場作業に従事するのは男性であり、女性は事務補助との考えで採用されていた。5年前ごろから大卒女性を採用し男性と同じ取扱をしているので、今後女性管理職の誕生が期待される。(建設業、300人~999人)