【随想】

110・117とW20


 標題を見て何のことかピンときた方、かなり女性活躍推進へのご関心が高い方ですね。 110は、世界経済フォーラムが昨年末に発表したジェンダーギャップ指数の149ヵ国中の日本の順位です。 2012年以来連続して100位以下と低迷しています。残念なのは、順位ばかり報道され、この指数が何を表しているか、何が原因で日本の指数が低いのかといった本質部分への関心が薄いことです。日本の指数は0.662で、もちろん1に近いほど男女格差が少ないのです。

 117は、そのジェンダーギャップ指数の本質にもかかわるものです。この指数は、経済、教育、健康、政治という4つの分野ごとの男女格差を表す指数の平均値で算出されているのですが、そのうちの経済の分野での日本の指数は0.595、順位は総合順位より悪い117位なのです。政治分野と並んでこの経済分野の指数の低さが原因となって、総合指数が低く順位も悪い。ちなみに政治分野の指数は0.081で125位、教育分野は0.994で65位、健康分野は0.979で41位です。

 経済分野の指数がどのように作られているかというと、男性の数値を分母に女性の数値を分子にして算出する方法で、①労働力率の男女格差、②推計勤労所得の男女格差、③同等労働に対する賃金の男女格差、④管理職に占める比率の男女格差、⑤専門・技術職に占める比率の男女格差を指数化し、これを平均しています。日本は特に④の指数の低さが足を引っ張っています。女性活躍推進法が制定されて大企業が女性活躍のための行動計画を策定するようになり、上場企業が女性役員の任命を加速するなど、日本の経営サイドも随分女性活躍推進に努力されていますが、多くの国々がこの分野の実績を積み上げる中、追いつくどころか差が拡大しそうな状況であることを、経済分野の指数と順位は表しています。

 さて、今年はG20が日本で開かれます。このG20に関し、各ステークホルダーにより形成されたエンゲージメント・グループの活動があることはあまり知られていません。 B20(経済団体)、L20(労働組合)等とともにW20 (女性)もその一つで、ジェンダーギャップを解消することによる新しい繁栄を目標に、対話や提言などを行います。前回のアルゼンチンG20では、大変熱心にW20での議論がもたれ、G20のアジェンダ全体としてジェンダーを主流化する旨が首脳宣言の冒頭に記されるなど、G20 での議論に大きな影響を与えたと聞きます。日本での W20はこの3月下旬に開かれます。この冊子がお手元に届く頃、日本でもジェンダーギャップ解消に向けたW20での議論が立派な成果を得て、大阪G20サミットにつながっていくことを期待したいと思います。

(21世紀職業財団会長 伊岐典子、機関誌「ダイバーシティ21」2019年春号より)

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