【随想】
Beautiful Harmony

多くの日本人の注目と好感を集め、新元号令和のもと新しい時代がスタートしました。そしてその少し前の本年 3月、新時代の幕開けにふさわしい魅力と迫力にあふれた女性ビジネスパーソンが集うイベントが、都内で和やかに開かれました。次代の女性役員輩出を目指した当財団のプログラム“女性部長のためのNext Step Forum”修了生の方々の同窓会です。年間をとおしたこのプログラムでは、リーダーシップの基本と経営戦略を学ぶ合宿をキックオフとし、月1回の著名な企業経営者の方々の講話とディスカッションで多くの刺激と気づきを得ながら参加者の方々が経営マインドを高めていきます。
参加者のネットワーキングもこのプログラムの目的の一つであることから、同期生のつながりは深く、プログラム終了後も定期的に連絡を取り合っておられますが、1期生か ら5期生まで5年間の修了生が一堂に会したこの同窓会では、さらに期を超えたダイナミックな交流があっという間に会場のあちこちで生まれて、どんどん大きくなりました。
何よりも印象的だったのは、出席者が例外なく自信に満ちたご自分のスタイルで近況報告をされたことです。実際に、これまでの修了生合計100名の方のうち既に2割ほどが、本社の役員や関係会社の社長などのポストに昇進され活躍されています。この日は、役員への昇進はもちろん、 役員へのステップとなる重要部署への異動や、役員昇進後さらに重要なポジションへの異動の報告もありました。
男女雇用機会均等法成立から34年の歳月が経過しているのに、何故まだ女性だけのプログラムが必要なのか?と疑問に思う方もいるでしょう。しかし企業の実態を見ると、生え抜きの女性の役員はまだ少なく、職場の文化、育児負担などが育成過程における経験の狭さ、選抜研修参加の機会の少なさ等につながり、昇格へのネックとなっている現状があります。企業を超えた女性同 士のネットワークをつくりながら意識を高め知識経験を深めていくことの意義は大きかったと修了生の方々が異口同音に述懐する所以です。
イノベーションを生み出すためのダイバーシティマネジメントの重要性が認識され、コーポレートガバナンスコードの改訂もあって、企業は女性幹部育成の必要性をより実に感じていると思います。また、女性の活躍が遅れているという評価が国際的に定着している感のある日本企業は、積極的な女性登用で対外的に経営の変革をアピールできるとも思います。
外務省は、令和の「令」は美しさ、「和」は調和を意味するものとしてBeautiful Harmonyと訳し、諸外国に説明しているようです。調和は単一、均一な質の組織よりも、多様性のある組織において意味のある言葉です。日本企業における女性役員は、令和の時代の日本企業が多様性を実現し、Beautiful Harmonyの名にふさわしい組織となるための要と言ってもいいかもしれません。
(21世紀職業財団会長 伊岐典子、機関誌「ダイバーシティ21」2019年夏号より)