【鼎談】仕事と介護の両立支援のために知っておくべきポイント(2/4)

●介護保険料の支払い開始となる40歳を学ぶきっかけに

伊岐:介護保険制度は2000年4月にスタートし、その後の歴史の中で様々なサービスが整備されていきました。一方、介護保険財政の増大が問題になる中で、サービスの利用抑制や給付範囲の縮小なども行われ、特に施設介護については、都市部で入所要件を満たしていても入所そのものがかなわなかったり、ミスマッチなどが起こって希望の施設に入れないことも珍しくありません。

 在宅サービスについても、仕事を持つ家族が安心して要介護家族を家において仕事に出かけられるレベルのサービスを、介護保険給付の範囲で実現することはなかなか難しいと思います。そのため、要介護の家族を持つ人が会社を辞めないで済むような条件整備は十分できていないと言わざるを得ません。
 じつはこのような介護保険制度に内在する問題以前に、そもそも介護保険制度のことを知らない人も案外多いと感じています。

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伊岐典子

佐藤:確かにそうですね。親が要介護状態にもかかわらず、要介護認定を受けていないという人も結構います。日本では、40歳に達した時点で介護保険の被保険者になるのですが、私たちが行った調査で、40歳以上の人に「あなたは介護保険料を払っていますか」と聞いたところ、2~3割は「払っていない」あるいは「わからない」との回答でした。企業に勤めている人は、基本的に40歳になれば給料から介護保険料を天引きされるのですが、「あなたは介護保険制度の被保険者ですよ」という情報提供がなく、支払っていることを認識していない人もいるのです。その結果、50歳、60歳になって、親が要介護になっても、介護保険制度のことを知らずに、認定を受けていない人が出てきてしまうのでしょう。
 また、親が要介護状態になったとき、要介護・要支援の認定を受けて在宅介護の場合では、ケアマネージャーには相談しても、会社には介護のことを話していない人が意外に多い。ケアマネージャーは要介護者の状況を把握して質の高い生活を送るために必要なサービスを考えますが、要介護者の家族の両立支援に関してアドバイスする役割を担うわけではないです。そうは言っても、家族が潰れてしまったら、要介護者も困るわけですから、ケアマネージャーには要介護者の家族の両立についてもアドバイスできる知識が必要だと思っています。4〜5年間このことをずっと訴え続けて、最近やっとケアマネージャーの資格取得後の研修に、要介護者の家族の両立支援という研修プログラムが加わりました。

伊岐:それはいいことですね。

佐藤:介護休業制度等についてもケアマネージャーに知識をもっていただいて、介護に直面した人にアドバイスできるようになっているといいと思います。有期雇用の場合でも一定の条件を満たしていれば介護休業や介護休暇を取得できる可能性が高いです。有期雇用の人にもかなりニーズはあるはずなので、会社側もしっかり周知していくことが大切ではないかと思います。育児の場合、母子手帳に有期雇用の人も育休が取得できることが記載されているので、対象者は誰もが制度を知ることができます。現状では、介護保険証は65歳になってから配布されるのですが、介護保険料の支払いが開始となる40歳で介護保険証を渡し、介護保険証で介護休業や介護休暇の仕組みなどについて書いておけば、まず仕事と介護の両立について理解するきっかけになると思います。そして、65歳の時点で、親がまだ元気なうちに介護保険のことを知ってもらうのがよいのでは。

座間:保険料を支払い始める40歳の時点で介護について学ぶのは、いい機会かもしれませんね。

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