【鼎談】仕事と介護の両立支援のために知っておくべきポイント(3/4)

●介護はいつまで続くかわからない

佐藤:「仕事と介護の両立」と「仕事と育児の両立」の異なる点の二つ目は、要介護状態はいつまで続くかわからないということです。育児の場合は、もちろん人それぞれ異なる状況はありますが、育休期間や復帰予定等を計画しながら、両立に向けて準備を進めることができます。企業もある程度の見通しを立てて支援を整えることができます。でも、介護はいつまで続くかわからないのです。よく、企業の人事の方から「介護休業の期間はどのぐらいが適切ですか」という質問をされるのですが、これは従業員が介護に専念するという前提で必要な介護休業期間を聞いているように思います。介護に要する期間は平均4年から5年で、10年以上も15%ほどになります。介護休業を介護の専念するための制度とすると、期間を10年にしてもダメです。それに事前には介護がいつまで続くかわからないのです。そのため、仕事と介護の両立では、従業員が介護に専念せずに仕事と介護を両立できるように支援することが大事です。従業員が自分で介護の担うのでなく、介護保険制度などのサービスを利用し、仕事と介護の両立をマネジメントすることが基本となります。

座間:以前、ベテラン社員の方が、「介護を抱えながら半端な仕事をして、まわりの人に迷惑をかけるのは自分の性に合わない。本当は仕事を続けたいが」と退職され、非常に悩ましいと思ったことがありました。

佐藤:制度を使えば両立できるかもしれないのに、準備ができていなかったために、そのことを知らずに「(仕事も介護も)自分がやらなければ」と抱え込んでしまって、仕事を辞めてしまう人がいるかもしれません。介護を抱えた状況で、仕事も頑張れるとは思えない人が多いのも事実です。自分がすべてやらなければいけないというこれまでの意識から、「両立も大事だから、ここは部下に任せよう」という意識に変えていく。自分自身が求める仕事の仕方を変えられないと、その人のようなことは起こりうると思います。
 それから、本人が会社を辞めた後にどう思っているか。辞めなければよかったと思っているかもしれません。仕事はしたいけれども、両立しながらでは自分の思うように仕事ができないし、やれる仕事に不満があるかもしれません。けれども辞めてしまったら、もっと不満になると思います。再就職しようと思っても再就職先がなかったりします。両立が大変で、100%仕事に向き合えないから辞めたとしても、実際に辞めたら毎日介護づくめで、もっと大変だったという調査研究もたくさんあります。

座間:なるほど。今は確かに大変だけれども、中長期で人生を考えたり、頑張り方を変えて、仕事での権限移譲を前向きに捉えるなど、両立するということを受け入れてもらうために、いろいろな事例を集めることは有効かもしれません。

伊岐:介護休業制度は、1990年度から政府がその普及促進を開始し、1992年には介護休業制度等に関するガイドラインが策定され、1999年に育児介護休業法に基づく介護休業制度がスタートしました。ガイドラインの検討の議論の始まりのころから、介護休業というのは、家族が要介護の状態である間ずっと休み続けるものというよりも、発病後症状が安定するまでの間や、退院直後、寝たきり直後、介護の最終段階である「みとり」等の緊急避難的な休業の必要性に対応するものであるとの認識で議論がなされてきました。働き続けることを前提とした制度として、選択的義務ではありますが、短時間勤務制度や時差出勤の制度等も、メニューに入っています。これらを利用してぜひ仕事を辞めずに介護と向き合ってほしいですね。
 それから、介護休業の取得率も、介護を理由に離職する割合も現状女性の方が多い状況(表1~表4参照)ですが、育児の場合ほどの男女差はありません。今は共働き世帯が全体の過半数を占めるようになっており、男性だから介護と無縁でいられるというわけにはいかなくなっていますね。


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佐藤:実際、今まで一緒に住んだこともなかったりする(配偶者の)親の介護なんて無理でしょう。介護は男性にもかかわる問題ですから、男性にはもう少し「自分がやらなければ」という危機意識を持ってもらわないといけないですね。

座間:共働きで50代以下の世代では、自分の親はそれぞれで看ましょうという感じにはなっていると思います。ですが、もしかすると、なかには当事者になるという意識が低い方もいるかもしれませんね。
 特に最近は独身の人が非常に増えています。そういう人が自分の親を看なければいけないという認識がなければ、問題だと思います。

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座間美都子

佐藤:以前、監修したことのあるDVD「仕事と介護の両立のために」(日経BP社)では、親の近くに引っ越して母親に子育てのサポートをしてもらっていた女性が、その後、母親が認知症になった時に、兄から「子育ての協力してもらったのだから、お前が母親の状況をみるべきだ」と言われてしまう……という事例がありました。実際に、親を呼び寄せて、子育てに協力してもらった経験のある女性もいると思います。それと同じ感覚で、親を自分の元に呼び寄せて介護することを勧めている企業もあるようですが、介護を育児と同じように考えてしまう典型的な例だと思います。

座間:高齢の方の場合、環境が変わったりして状態が悪化することもあると聞きます。

佐藤:都心に親を呼んで施設を探そうとしても、要介護3では特養に入ることは難しい。5でも難しいかもしれません。でも、地方であれば比較的入居しやすい。親にとっても住み慣れないところに移住して環境が変わることはすごく負担や不安が大きいだろうと思います。友達もいなくなるし、散歩すると言ったって場所もよくわからない。使い慣れた方言も通じない。そうするとデイサービスに行っても馴染めない。近くに呼んだほうがいい場合もありますが、親を呼び寄せることを普通の考え方としてしまうのはよくないと思います。基本的には専門家と相談することをお勧めします。

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