均等法パイオニア世代からのメッセージ<第2回>(3/3)

「執行役員になり、今まで関わってこなかった会議が増えて、情報量が今までとは全然違うと感じています」

――損害サービス一筋だった鍋嶋さんが、2019年に東京海上ホールディングスの人事部長に任命されたのですね。

鍋嶋さん:本当にびっくりしました。ただ、人事には関心もありましたし、ロサンゼルスに赴任中に少し経験があったので、人材育成には興味を持っていました。女性たちを元気づけたいという思いもありました。

 2021年度から執行役員に就任し、グループダイバーシティ&インクルージョン総括(Chief Diversity & Inclusion Officer、以下、CDIO)に任命されました。女性の執行役員はすでに数名おりますが、チーフオフィサー職(以下、C職)で女性は初めてで、荷が重いなと思う部分もあります。ただ、ダイバーシティ&インクルージョンは私のライフワークとしてきたテーマではあるので、この役割をいただいて、本当にありがたいと思っています。グループ内の課題はまだあるので、これからしっかりと取組みを推進していきたいと思っています。

――ダイバーシティカウンシルという仕組みもいいですよね。

鍋嶋さん:はい、ありがとうございます。これから本格始動ですが、まずは、CDIOとして国内外のグループ会社とD&Iについての議論を深めていきたいと考えています。今年の重点課題の一つに「女性エグゼクティブパイプラインの強化」を挙げています。日本がだいぶ遅れているのは事実ですが、マネージャー層は50%以上を達成している欧米やアジアにおいても、部長や役員となるとそれぞれ30%弱、15%弱になります。海外グループ会社と共通の課題なので、しっかりと取り組んでいきたいと考えています。

――C職になって、参画する会議体も増えたのでは。

鍋嶋さん:はい、経営会議やグループCEOがテーマを決めて話し合うC職ミーティングに参加するようになり、情報のレベルと量が今までとは全然違うと感じています。今回、執行役員かつC職になって、社内のアクセスが広がりました。まだ議題すべてに精通しているわけではないので、なかなか発言しにくいこともありますが、会議ではできるだけ発言するようにしています。

「可能性は無限大。何かを犠牲にしなければ両立はできないという思い込みはもったいない」

――働く女性たちへのメッセージをお願いします。

鍋嶋さん:自分の強みや良いところをぜひ肯定してほしいです。自己肯定感はすごく大事だと思います。「謙虚であれ」というのが日本の文化として大事なことだと思うのですが、謙虚であることと卑下することは違います。謙虚さは必要だけれども、他人と比べずに自分の良さをもっと認めてほしいですね。

 私は学生と話をすることがよくあるのですが、私のキャリアを見て、「何を犠牲にしてきたんでしょうか」と質問されます。AかBか選択しなければならなかったときに、選択しなかったほうが必ずしも犠牲になった、あるいは失ったものとは限りません。私はそれを自分の選択の結果と捉えていて、犠牲だとは思っていません。女性は何かを犠牲にしなければ仕事と両立ができないという思い込みがあるような気がしています。それはもったいないし、考え方次第だと思うのです。私は仕事を続けて、結婚して、子どもを産み育て、海外にも行くということを、どうやったら実現できるかと考えました。すべてが常に上手くいくわけではありませんが、ぶれない軸を持って、どうやったらできるかを考えて、選択してきた結果を自分自身が受け入れることが秘訣かもしれません。

――物事を前向きに捉えられている姿勢が、鍋嶋さんご自身の仕事観や家族観に現れているように感じました。

鍋嶋さん:そういう意味では欲張りなのかもしれません。私は育休後、フルタイムで復職しようと思っていたので、そのためにはどうすればできるかを考えました。まず、全部一人でやろうとは思いません。家庭の事情はそれぞれ違いますが、初めから無理と決めつけず、試行錯誤してみてもいいのでは。

 日本では良妻賢母志向が強く、女性が家事育児を担うことを世の中からも期待されていて、それが結構、女性を苦しめているのではないかと思います。私も復帰してから、子どもを保育園に預けていて「子どもが可哀想」と言われたことがあります。ですが、家で私とべったり過ごすよりも、保育園で同じ年代の子と社会をなして、時には喧嘩しながら、泥んこになりながら遊ぶほうが私は余程楽しいと思っています。

 私は、人の可能性は無限大だと思っているので、「○○でなければならない」と自分を縛ることはないと思います。女性にとっては制約の多い世の中なのですが、何かを諦めなければいけないと思うのではなくて、ライフプランやキャリアビジョンを見据えて、どうすれば実現できるか常に選択肢を広げておくことが大事だと思います。

※ダイバーシティカウンシル……D&Iをグループの持続的な成長につなげるためには、トップダウンとボトムアップの両面から取り組む必要があり、グループCEOが委員長になり、CDIOが国内外グループ会社を代表するメンバーとのD&Iに関する議論をリードしD&Iの取組みを加速させていく仕組み

機関誌「ダイバーシティ21」2021年秋号より)


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[均等法パイオニア世代からのメッセージ]

第1回 山科裕子さん(オリックス・クレジット株式会社 執行役員会長)

第2回 鍋島美佳さん(東京海上ホールディングス株式会社 執行役員)