均等法パイオニア世代からのメッセージ<第3回>(3/3)

「出向を経験して今まで気づかなかった部分が見えるように」

――現在はANAから出向され、国際航空券のGDS(予約・発券システム)サービス等を提供するインフィニトラベルインフォメーション(以下、インフィニ)でエアラインマーケティング部長として勤務されているのですね。

松崎さん:2019年7月にインフィニへ出向し、同時に部長になりました。いま3年目に入ったところです。エアラインマーケティング部は、各航空会社とのGDSサービスの契約を行う部署です。そのため、出向元も含めて国内外の航空会社がお客様です。コロナ禍により出張はほぼなくなりましたが、本来であれば頻繁に海外への出張もある仕事です。

――出向されて見えてきたことはありますか。

松崎さん:当社はANAが60%出資しているグループ会社ではありますが、各航空会社が顧客となるため、ニュートラルな立場であり、会社名に「ANA」の名前は入っていません。こういう中立な立場で仕事をするのは初めてで、出張のときも、これまではほぼANAしか使ったことがなかったのですが、他社も利用するようになりました。そうすると自社の良いところも悪いところも見えてきて、外を知るというのはこういうことなのだなと実感しています。同じ航空業界でも他社ではこのように考え方が違うんだとか、とても勉強になります。今まで気づかなかった部分が見えて、本当に面白いですね。

「部長として経営者の考え方や経営戦略を学ぶ機会を得て、もっと学びたいと思いました」

――管理職に昇進されてから、様々な研修にも参加されていると思います。先ほどの話でも触れましたが、昨年は当財団の女性部長のためのNext Step Forum(NSF)にも参加されたのですよね。

松崎さん:管理職になってから、今まで対象外だった研修も少しずつ参加するようになりました。中でも、NSFの経験は3つめのターニングポイントだと思えるほど素晴らしい経験でした。

 私は管理職になって現在4年半とまだ短く、今までの経験値というものが明らかに足りないまま部長職に就いていることは、自分が一番分かっていました。部長として経営のことも考えていく立場であるにもかかわらず、私の知識や経験や視点が足りていないと感じていたところでNSFに参加する機会をいただきました。最初はとてもドキドキし緊張していたのですが、講師の先生方のお話は本当に面白く大変勉強になりましたし、何より、様々なことを乗り越えてきている受講者メンバーの女性部長の皆さんとの意見交換は毎回とても楽しみでした。コロナ禍で予定されていた合宿ができず、飲み会もまだ実現できていないのですが、彼女たちとは今も2カ月に1回ぐらいのペースでオンライン飲み会をやっています。

 NSFの講義の中で、セメックスという企業のケーススタディがとても興味深く、もっとケーススタディを学びたいと思いました。自分なりに考えていくと、ただの数字がちょっとずつ意味のある数字に見えてくるのが面白かったですね。そして講義を受ければ受ける程、自分が何も知らないことを思い知りました。NSFに参加したことがきっかけで、今年から大学院に通い、MBA取得のための勉強を始めました。NSFの講義では、経営者の生の声に触れ、考え方や経営戦略を学ぶ機会をいただき、お恥ずかしいのですが、それまで財務諸表なんて興味もなかったような私の人生を変えてしまうぐらいの経験でした。

 今、コロナ禍により航空業界は大きな打撃を受けています。インフィニも同じように打撃を受け続けています。この状況から早く脱出する策を考えるためにも他の業界や他社のことを勉強して、なにか鍵を見つけたいとも考えました。

――業務をこなしながら、大学院に2年間通われるのですよね。

松崎さん:毎週末の土日2日間で授業を受けています。勉強自体はとても楽しいのですが、授業で毎週ケーススタディを4~5本やって、次の授業までに同数のレポートを出さなければいけないのです。ケスも相当読み込まなければ、次の授業で議論ができません。事前学習も単位取得条件の一部ですが、クラスに40~50名いる中でグループセッションでの発言の多さと質も重視されます。要するに、平日は仕事がある中で授業の準備をしなければいけないので、勉強はいつも夜中です。精神的に追い詰められてかなりつらいと感じることもありますが、クラスメートのみんなも同じように働きながら勉強しているんだと思って頑張っています。

「チャンスは二度とないと思って、やらないよりやったほうがいい」

――最後に若い世代へのメッセージをお願いします。

松崎さん:私はいろいろとキャリアを積むのが遅かったと感じているので、ぜひ早いうちにチャレンジしてほしいなと思います。大学院で勉強していても、もっと早くに知っておきたかったと思うことばかりです。いま私がモットーにしているのは、「今日が一番若い」です。私はチャンスが目の前にあっても掴んでこなかったことが何度もあったと思っています。その時々で制度や環境が整っておらず、自分が挑戦することで、家族を始め周囲に迷惑をかけることを恐れていたのだと思います。もちろん、後悔はしていないのですが、今振り返ってみると子育てや環境を言い訳にして逃げ道をつくっていたのかも知れません。その時は無理だと思っていても、もう少し頑張れたのではないかと思うこともあります。やらない言い訳はいくらでも考えられます。でも、「今日が一番若い」という発想に切り替えたら、今やらないでいつやる、駄目なら駄目でもいいやと思えるようになりました。それこそMBAへのチャレンジは考えてもいなかったことでした。

 いくら国や企業の制度が改善されてきて女性の活躍の場が増えたとは言え、まだまだ女性にはハードルがたくさんあります。周囲に迷惑をかけたくないと考える人も多いのではないでしょうか。でも周囲には手を差し伸べてくれる人もいます。私自身、本当にたくさんの人に支えられてここまできました。感謝の気持ちを忘れず、自分に力をつけて、今度は誰かを支えられるようになりたいと思っております。だからこそ、限られたチャンスは逃さない。今を逃したらチャンスは二度とないかも知れないと思ったら、やらないよりやった方がいい。失敗してもいいのです。チャレンジしたことは必ず何かの役に立つ。無駄なことは何一つないと考えたら、できる限りのことはやりたいですね。そういうチャンスが来たということは、乗っていいチャンスのはずなので、ぜひ挑戦してほしいなと思います。

機関誌「ダイバーシティ21」2021年冬号より)


最初のページに戻る


[均等法パイオニア世代からのメッセージ]

第1回 山科裕子さん(オリックス・クレジット株式会社 執行役員会長)

第2回 鍋島美佳さん(東京海上ホールディングス株式会社 執行役員)

第3回 松崎真紀さん(株式会社インフィニトラベルインフォメーション エアラインマーケティング部部長)

第4回 森岡典子さん(株式会社IHI 執行役員)