均等法パイオニア世代からのメッセージ<第4回>(3/3)

「自分で自分の心に垣根や壁をつくらないよう心がけています」

――昨年から執行役員になられましたが、ご自身の目標や心がけなどがありましたら、お聞かせいただけますでしょうか。

森岡さん:執行役員になったからということではないのですが、なるべく視座を高くするように努力し続けたいと思います。そのためには、自分で自分の心に垣根や壁をつくらないよう心がけています。自分との戦いです(笑)。自分がどれだけ心理的垣根を低くして、世の中につながれるか、世の中のことを見られるか、ということなのかもしれないですね。

――現在は、どのような職務を担われているのでしょうか。

森岡さん:今年の4月に、戦略技術を統括する組織が新設され、その部門の副本部長を担っています。この組織は社長自らが本部長を務めています。2019年に中期経営計画を出していますが、その直後に新型コロナウイルス感染症が広がり、世界環境も社会環境も急激に変わり、世界情勢が脱炭素という流れに進みました。そういう世の中の変化をしっかりと捉えて会社の未来を考えていくために、情勢の変化に合わせて中期経営計画の見直しを行い、昨年の11月に「プロジェクトChange」として発表しました。

 「プロジェクトChange」では、成長事業の創出を柱のひとつに掲げています。成長事業の創出といっても、いきなり何か事業が生まれるわけではありません。2、3年後の近い未来ではなく、例えば2050年というようなもっと先の将来に、IHIのもつ技術を活かして、社会あるいは世界に何を貢献したいかという会社のビジョンを明確にして、そのビジョンに向かっていくために、どういうステップを踏んで、何を強みとして進むべきかという戦略を立てるのが主なミッションです。

 業績を加味して想定できるのは、3年先、せいぜい5年先くらいまでで、その先を見通すのは難しいのですが、世界の技術の進歩も環境の変化も早いので、その時になって急にピボット(方向転換、路線変更)し、技術を高めて製品化・事業化するということでは、全く間に合いません。ですから、ある程度長期な観点で、どういうふうに社会に貢献していきたいかを描いておくのです。将来はこうなるだろうから、こういう世界をつくりたい、技術の力で貢献したいと考えたときに、何をしなくてはいけないかを考えられる思考力が必要です。そのためにはスピード感や世の中に対するアンテナの高さが大事で、時流に合わないとなったらビジョンも変化させていく、ということも考えて進めていく判断力も必要な任務です。

――そのような大きな戦略を考えるとなると、関わっている人たちも多いのではないでしょうか。

森岡さん:戦略の実行部隊まで入れてしまうと、図体が大きくなり過ぎて、スピードも効率も落ちてしまいます。あまり頭でっかちにならないように、ある程度こじんまりした組織で戦略の立案を行っています。メンバーは、専門技術を持っていたり、分野に長けている人であることはもちろんなのですが、ビジョンや戦略立案には「こういうことがやりたい」という信念をもっていることも大事なので、そういう思いのある人たちが集まってくれています。

「チャレンジしづらい時期はどんな人にでもある。その中でも何かをやりたいとの思いが原動力になっています」

――35年前から比べると、仕事をし続けて活躍する女性が少しずつ増えて、多様なキャリアの道筋ができて、女性の働き方が変わりつつあります。その一方で、まだまだ理系の女性が少なかったり、男女同等にキャリアを積むことができるかというと、未だにそうではない面もあるのが現状です。

森岡さん:均等法施行から35年が経ってもまだ女性が取り上げられていて、これが日本の社会の実態なのかと思うこともあります。ダイバーシティ& インクルージョンというのは女性だけを対象とするのではなくて、もっと広い範囲を対象とすることなので、早く「女性だから」という時代はなくなってほしいと思っています。男女関係なく、どんな仕事をするか、しないか、を含めて、いろいろな選択肢も生き方もあると思っていますし、あって当然という世の中になったほうがいい。本人はもちろん、まわりにいる人にも、会社にも、いろいろな選択肢は誰にでも平等にあるということをもっと自然に認識し合うような意識が根底に流れるといいのだろうなと思っています。

 自分自身で「ここまでしかできない」とか、まわりが「ここまでしかやらせられない」とか「こうでなければいけない」とか、いろいろな既成概念がまだまだ存在していると思うのです。その既成概念みたいなものを自分にはめてしまいがちです。そんなものはないというのは簡単ですが、実はそこには結構ハードルがあるから、男女問わず苦労していると思うのですが、もっと自由になってもいいのではないかなと思います。

――最後に、後に続く女性のみなさんに向けてメッセージをお願いします。

森岡さん:働き続けるなかでチャレンジしづらい時期は、どんな人にでもあると思うのですが、そんなときでも、何かを成し遂げたいとか、何かをやりたいと思うことが自分のエネルギーの原動力になっています。やりたいことがあれば、いつでもチャレンジしていいと思います。今の世の中は終身雇用でもないし、好きなことがどこか別のところにあったら飛び出したって全然構わないと思うのです。そのぐらい自由な発想と心持ちで、やりたいことに挑戦していってほしいです。

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[均等法パイオニア世代からのメッセージ]

第1回 山科裕子さん(オリックス・クレジット株式会社 執行役員会長)

第2回 鍋島美佳さん(東京海上ホールディングス株式会社 執行役員)

第3回 松崎真紀さん(株式会社インフィニトラベルインフォメーション エアラインマーケティング部部長)

第4回 森岡典子さん(株式会社IHI 執行役員)