財団設立35周年・均等法施行35年ONLINE SYMPOSIUM

日本のD&I これまでとこれから

【趣旨説明】日本のD&I、これまでの歩みと課題(2/2)

◤女性活躍推進からD&Iへ ◤

 成長戦略の一環として女性活躍推進法が施行されると、一気にポジティブ・アクションが広がりました。女性活躍推進法ではポジティブ・アクション推進のための計画を「一般事業主行動計画」と名づけ、301人規模以上の企業に数値目標の設定を含めた計画の作成、届出とともに、周知、公表なども義務付けました。このことにより日本企業がポジティブ・アクションに取り組む手法が明確になったと言えます。2022年4月には行動計画の策定義務が101人以上規模の企業に拡大されます。しかし注意が必要なのは、恒久法である均等法と異なり、女性活躍推進法は時限立法だということです。2026年3月末には原則として終了することになっています。その意味で、この法律は限られた期間内で日本の企業に対し成長に必要な女性の戦力化の推進を求めていると言えます。

 ポジティブ・アクションや女性活躍推進は、近年、ダイバーシティ推進という表現に包含されるようになってきました。多様な人材を活かし、その能力を最大限発揮していくことでイノベーションを生み出し、価値創造につなげていくといった経営視点から使われることも多くなりました。そのため日本では企業や経済団体、経済産業省などが率先してこの表現を使うようになりました。

 このダイバーシティ推進は、様々な実践や議論を経てダイバーシティ&インクルージョン(D&I又はI&D)といった表現や考え方に進化しました。ただ多様な人材を組織に存在させるだけではなく、ありのままに受け入れ、尊重した上で、組織のコアな戦力として活かさなければならない。このインクルージョンの重要性が強調されています。更に、多様な人々を包摂する過程においての正当性と公正性を表現する言葉として、「エクイティ」を加えたダイバーシティ・エクイティ& インクルージョン(DE&I)といった表現も用いられるようになってきています。公平・公正の観点はもともと差別禁止法制の前提となる考え方であり、D&Iにおいてエクイティを重視することは当然のことだと考えています。

◤日本のD&I を加速させるために ◤

 改正均等法及び女性活躍推進法により、日本企業のポジティブ・アクションは進展してきましたが、グローバルに見ると、先行する欧米諸国との差を日本は縮められていません。ジェンダーギャップ指数が発表された2006年以来、指数を構成する経済、教育、健康、政治の4つの分野のうち、日本の経済分野のスコアは改善しているものの、一貫して低位にあり、トップレベルの国との差は縮まっていません。経済分野で圧倒的に日本が諸外国に遅れをとっているのは、管理的職業従事者数の男女比のスコアです。これについても日本のスコアは少しずつ上昇していますが、このままのペースでは、先進各国の中で最も水準の低いドイツに追いつくのに25年ほどもかかる状況です。

■ジェンダーギャップ指数国際比較(経済分野)

(出典:世界経済フォーラム「ジェンダーギャップレポート」各年)

 我が国のD&Iの今後に向けた課題は、第一に、依然として残る日本的雇用システムとの関係です。これまで多くの企業が学卒一括採用後、自社内で育成した社員を管理職や経営幹部に登用してきました。そのため、かつて女性の採用が少なかった企業では、管理職や経営幹部に女性を登用しようとしても、候補となる人材プールに入る女性の数が限られ、思うように登用が進まないという声を聞きます。また、外国籍の人や、多様な経歴や資質の人材を取り込み、活躍してもらうためには、日本的な人材育成システムや報酬体系についても様々な角度から改良していかなければなりません。

 第二に、D&Iは、イノベーションを生み出し、サステナブルな経営に不可欠であるという経営者の信念とリーダーシップのもとで進められなければ実現が困難なテーマですが、現状では本心からこの問題の重要性に腹落ちして正面から取り組んでおられる経営者がすべてではないということです。

 第三に、「育児は女性が行うべき」、「重要な仕事は男性が担うべき」といった古典的な役割分担意識が日本では払拭されていません。このアンコンシャス・バイアスが、人事管理をする側だけでなく、働く女性自身や男性の同僚など様々な関係者に存在することが、D&Iの実現を妨げています。

 第四に、今まで述べてきた点の結果でもありますが、現在の日本のD&I推進のスピードでは諸外国に追いつくことが難しく、このままではグローバルな人材競争に勝つことが困難になり、イノベーションや成長に遅れを取る恐れがあることです。

 第五として、科学、技術、工学、数学(STEM)分野への女性の進学が少なく、女性が能力を十分発揮できるための教育にかかる条件整備が十分でないということです。

 もちろん日本のD&I を加速させる機運も出ています。国連で2015年に採択されたSDGs(持続可能な開発目標)がそのきっかけのひとつです。SDGsの17の目標はターゲットイヤーを2030年とし「ジェンダー平等を実現しよう」、「人や国の不平等をなくそう」という平等関係の2つの目標が含まれています。企業はサステナビリティ報告書などにSDGsの取組みの重点目標を公表しています。また環境・社会・ガバナンスの観点から企業を評価して投資を行うESG投資が世界中で急速に進展している点も重要です。このようなグローバルな動きへの機敏な対応がD&Iの加速へプラスに働くことを大いに期待しています。

 当財団は女性労働者の能力活用のための雇用管理の改善という設立時の目的を拡大し、現在は「あらゆる人がその能力を十分に発揮しながら、健やかに働ける環境を実現する」という理念のもとに事業を展開しています。1993年には名称を「21世紀職業財団」と変更しました。文字通り21世紀に相応しい日本のD&Iの加速に貢献するべく、今後も日夜努力を重ねてまいります。

 (機関誌「ダイバーシティ21」2021年冬号VOL.47より)

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[ONLINE SYMPOSIUM『日本のD&I これまでとこれから』―講演抄録―]

【基調講演】D&Iを加速するために~未来を切り開くD&I経営~

【趣旨説明】日本のD&I、これまでの歩みと課題

【パネルディスカッション】3年後のD&I。加速する為の打ち手を探る