2026年04月01日
ハラスメント防止の基礎
職場における妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント
根拠法:男女雇用機会均等法、育児・介護休業法
根拠法:男女雇用機会均等法、育児・介護休業法
(1)妊娠・出産等・育児休業等に関するハラスメント
「妊娠・出産等・育児休業等に関するハラスメント」とは、職場において行われる上司・同僚からの言動により、妊娠・出産した女性労働者や育児休業・介護休業等を申出・取得した男女労働者等の就業環境が害されることをいいます。
業務分担や安全配慮等の観点から、客観的にみて、業務上の必要性に基づく言動によるものはハラスメントに該当しません。例えば、ある程度、調整が可能な休業等(例えば、定期的な妊婦健診の日時等)について、その時期をずらすことが可能か労働者の意向を確認する行為はハラスメントには該当しませんが、医師等からの休業指示が出た場合など、労働者の体調管理上、すぐに対応すべき休業について利用時期の調整等を求める行為は、仮に業務に支障があったとしてもハラスメントに該当します。また、労働者に対する変更の依頼や相談の域を超えて、“強要”に至った場合には、ハラスメントに該当します。
(2)妊娠・出産等・育児休業等に関するハラスメントの類型
①制度等の利用への嫌がらせ型
出産・育児・介護に関連する社内制度の利用に際し、当事者が利用をあきらめざるを得ないような言動で制度利用を阻害する行為をいいます。解雇その他不利益な取扱いを示唆する言動、制度等の利用を阻害する言動、制度等を利用したことにより嫌がらせ等をする言動が該当します。
上司が、労働者に対して解雇その他不利益な取扱いを示唆したり、制度等の利用や利用の請求等を阻害する言動を行った場合は、一回の言動でもハラスメントに該当します。
また、同僚が、制度の利用や利用の請求等を阻害する言動を行った場合は、繰り返し又は継続的なものが該当しますが、相手が意に反する(受け入れられない)ことを伝えているにもかかわらず、同僚がこのような言動を行った場合は繰り返し又は継続的でなくてもハラスメントに該当し得ます。
②状態への嫌がらせ型
女性労働者が妊娠・出産したこと、妊娠・出産により労働能率が低下したこと、就業制限により就業できないこと等を理由として、上司が解雇や降格、不利益な配置転換、減給などの不利益な取扱いを示唆したり、女性労働者が妊娠等したことにより、上司や同僚がその女性労働者に対して、繰り返し又は継続的に嫌がらせ等をすること(※)をいいます。
上司が解雇等不利益な取扱いを示唆した場合は、一回の言動でもハラスメントに該当します。 また、女性労働者への嫌がらせ等については、上司、同僚のいずれが行った場合であっても繰り返し又は継続的なものが該当します。ただし、相手が意に反することを伝えているにもかかわらずこのような言動を行った場合は、繰り返し又は継続的でなくてもハラスメントに該当します。
①「制度等の利用への嫌がらせ型」 制度等の利用に関する言動により就業環境が害されるもの

※「制度等の利用への嫌がらせ」の例
○産休の取得について上司に相談したところ、「産休をとらずに辞めたらどうか」と言われ、取得をあきらめざるを得ない状況になっている。
○育休の取得について同僚に相談したところ、「長く育休を取得されると職場に迷惑だ」「(男性労働者に対し)奥さんがとればいいじゃないか」と繰り返し(又は継続的に)言われ、取得をあきらめざるを得ない状況になっている。
○妊婦検診に行くための休暇の取得を上司に相談したところ、「忙しいから妊婦検診に行かせる時間なんてない」と言われたため、仕方なく休日に妊婦検診に行った。
○つわりがひどいため医師の診断をもらおうと思っていると同僚に相談したところ、「つわりぐらいで医師の診断なんて甘えている」と繰り返し(又は継続的に)言われ、母性健康管理措置をあきらめざるを得ない状況になっている。
○軽易な業務への転換について上司に相談したところ、「業務を変える余裕はない。引き続き今の業務をやってほしい」と言われ、請求をあきらめざるを得ない状況になっている。
○時間外労働の免除について上司に相談したところ、「周りが残業する中、あなただけを定時に退社させられるわけがない」と言われ、請求をあきらめざるを得ない状況になっている。
○短時間勤務制度の利用を上司に相談したところ、「短時間勤務されたらシフトが組めなくて困る」と言われ、申出をあきらめざるを得ない状況になっている。
②「状態への嫌がらせ型」妊娠したこと、出産したこと等に関する言動により就業環境が害されるもの

※状態への嫌がらせの例
<仕事をさせない>
○上司や同僚が「妊婦はいつ休むかわからないから仕事は任せられない」と繰り返し(又は継続的に)言い、仕事をさせない状況となっており、就業をする上で看過できない程度の支障が生じる状況となっている。
○上司や同僚が「(客観的に見て、妊婦の体調が悪くないにもかかわらず)楽な業務にかわってはどうか」と言い、妊婦が「今の業務を引き続きやりたい」と明確に示しているにもかかわらず、さらに「楽な業務に変わるべき」と発言し、就業をする上で看過できない程度の支障が生じる状況となっている。
<嫌がらせ発言>
○上司や同僚が「妊娠するなら忙しい時期を避けるべきだった」と繰り返し(又は継続的に)言い、就業をする上で看過できない程度の支障が生じる状況となっている。
○上司や同僚が「つわりで仕事の能率が落ちているのではないか、迷惑だ。」と繰り返し(又は継続的に)言い、就業をする上で看過できない程度の支障が生じる状況となっている。
○上司や同僚が「(客観的に見て、妊婦の体調が悪くないにもかかわらず)つわりで仕事の能率が落ちているから休むべき」と発言したところ、妊婦が「つわりはひどくなく、これまでと能率は変わらない。」と明確に示しているにもかかわらず、さらに「休むべき」と発言し、就業をする上で看過できない程度の支障が生じる状況となっている。
(3)事業主の防止措置義務等
妊娠・出産・育児休業等ハラスメントを防止するため、事業主には、各ハラスメント共通の4つの防止措置(㋐事業主の方針の明確化及びその周知・啓発、㋑相談(苦情を含む)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備、㋒事後の迅速かつ適切な対応、㋓相談者等のプライバシーの保護及び相談等を理由とする不利益な取扱いの禁止に関する規定(ルール)の整備と周知等)の他に、「ハラスメントの原因や背景となる要因を解消するための措置」が義務付けられています。
具体的には、「周囲の労働者の業務分担の見直し」、「業務の偏りの軽減」、「業務点検による業務の効率化」等の対応が求められます。
また、労働者に対して、休業制度等の利用ができることとともに、周囲と円滑なコミュニケーションを図りながら、自身の体調等に応じて適切な業務遂行を心がけること等を周知・啓発することが望まれます。
(参考)妊娠・出産・育児休業等を理由とする不利益取扱いについて
上述したように、マタハラによって労働者の就業環境を害することがないよう、事業主には防止措置が義務付けられています(男女雇用機会均等法第11条の3、育児・介護休業法第25条)。
一方、「妊娠、出産等を理由とする解雇その他不利益取扱い」(男女雇用機会均等法第9条第3項)及び「育児・介護休業等の申出・取得等を理由とする解雇その他不利益取扱い」(育児・介護休業法第10条、16条等)は、法律で禁止されており、本人が本当に同意している場合など特別の事情がある場合を除き許されません。一部に、「妊娠・出産・育児休業等を理由とする不利益取扱い」のことを“マタハラ”と呼ぶ人がいますが、法律上は明確に区別されていることに留意が必要です。



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