2026年02月20日
スーパーバイザーコラム
アサーションから始める、互いを大切にするコミュニケーション⑤
【言葉にする重要性】

チームでの活動には、役割分担が明確であることが重要です。「ここから先はできないけれど、ここまではできます」という線引きがはっきりして、かつ共有されていると、チームとしての機能は向上します。この線引きのことを、英語ではlimit settingと言い、日本語では限界設定と紹介されます。ただ「限界」と言うと、「がんばったけどもう無理!」という、ギリギリかそれ以上をイメージするかもしれないので、「限度」ぐらいで考える方が、特に職場でのコミュニケーションでは現実的でしょう。

日本社会はもともと、コミュニケーションにおいて前後からくみ取ったり共有体験から察したりする、文脈(コンテクスト)への依存度が高いハイ(高)コンテクスト文化です。ハイコンテクストのコミュニケーションは、お互いに相手の意図を慮りあうことでなんとなく成立し、そこには忖度が求められます。それに対し、欧米文化に多く見られるロー(低)コンテクストのコミュニケーションは、共有体験などに頼らず、あくまで言語で情報をやり取りしようとします。 職場で、「これはできます、これはできません」と細かく言う人は、理屈っぽい、水くさい、と敬遠されてしまうかもしれません。反対に、言われたこと以上に何かしてくれる人は、気が利く、と評判が上がることもあるでしょう。お互いのことがなんとなくわかっている(とそれぞれが思っている)ハイコンテクストの職場の場合は、いちいち細かく言わないことが好まれる傾向が強くなります。

しかし、最近の労働市場の変化を考えると、ハイコンテクストなコミュニケーションは通用しなくなりつつあると考えられます。机を並べて同じように仕事をしていても、それぞれの背景や社会経験、価値観が異なるので、「言わなくてもわかる」ことはさらに減っていくでしょう。今後、日本の職場でも、言葉で情報をやり取りする、ローコンテクストなコミュニケーションの必要性が増すと考えられます。

自分の限度を言葉ではっきりと伝えることは、アサーションの基本です。とはいえ、一方的に「○○できない」と主張して突き放したのでは、アサーションのそもそもの目的である、相手を交渉のテーブルに着けることができません。「○○ならできます」という代案を提示して、交渉したい気持ちがあることを相手に伝えましょう。

「今日は6時までなら残業できます」と伝えたのに、結局6時半までやってしまった、となると、せっかくの交渉が前提から覆されてしまいます。「これ以上は譲れない」という限度をしっかり自覚した上で、交渉に臨むようにしましょう。

執筆者プロフィール
八木 亜紀子氏(21世紀職業財団 社外相談窓口スーパーバイザー)

博士(医療福祉ジャーナリズム学)/福島県立医科大学 特任准教授 /アアリイ株式会社 代表取締役

米国で日英両語でカウンセリング、ケースワーク、リーダーシップ養成トレーニングを提供。帰国後、専門家養成、従業員支援、障害者就労支援、女性研究者支援、東日本大震災による被災者支援に従事。

 

【資格】
カリフォルニア州臨床ソーシャルワーカー/国際EAP協会認定EAプロフェッショナル/精神保健福祉士/公認心理師

 

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