“人”と向き合う社労士事務所へ――ハラスメント防止で企業の未来を支える

社会保険労務士法人 片境事務所 様

社会保険労務士 片境一暁様(2022年認定試験合格)
職員 片境瞳様(2024年認定試験合格)

※所属・肩書等は2026年2月当時

ハラスメント防止業務に力を入れてきた社労士事務所。資格取得の背景や、実務にどう活かしているのかについてもお話を伺いました。
AIや機械化が進む中で、社労士だからこそ発揮できる“人”へのアプローチを強化し、地域企業でハラスメント問題とどう向き合っているのか。現場で感じる課題や、これからの事務所経営のあり方について詳しくお聞きしました。

質問:お二人がハラスメント防止コンサルタント資格を取得されたきっかけは何でしょうか?

一暁氏:私がやりたい社会保険労務士事務所の未来の経営というのは対人間の仕事です。社労士業務の中心とも言える申請や手続きについては、機械化・AI化の進展で将来的に依頼件数の減少や価格競争に巻き込まれる可能性があるのではと思っています。対人間のコンサルティングを強化するという経営方針のもとにハラスメントに力を入れたく、まず私が認定試験に挑戦。続いて瞳も受験し、合格しました。

質問:ハラスメント防止関連の業務の事務所内での位置づけや現在どのような業務があるか教えて下さい。

一暁氏:主力化を目指して、現在育てている領域です。既に常設窓口契約を複数企業と結んでおり、ハラスメント発生後の事後対応も増えています。

質問:どんなハラスメント案件が多いですか?

一暁氏:パワハラとセクハラに関する相談が比較的多いです。
最近は「匿名メール相談」への対応に、より丁寧さを心掛けています。電話や対面相談であれば、相談者の感情や状況を受け取りやすいのですが、メールではその部分がどうしても感じ取りにくくなります。また、匿名の場合は事実関係の聞き取りが難しいため、慎重に対応を進めています。

質問:ハラスメント業務におけるお二人の役割分担はいかがですか?

一暁氏:表向きには私が担当ですが、性別に配慮が必要なケースや女性相談者の対応では、都度、瞳と相談しながら進めています。

瞳氏:私はまだ、案件に直接関わる機会は少ないですが、「女性の相談員がいる」という安心感を対外的にアピールできるのは大きいです。今年からは相談フォームも設置し、窓口強化を進めています。

質問:地元企業に向き合う中で、ハラスメントに関する意識や取組の傾向等をどのように感じていますか。

一暁氏:富山は中小企業が多い地域ですが、ハラスメントへの向き合い方は当然企業によって大きく差があります。意識が高く積極的に取り組む企業もあれば、「自社では起きない」と考えてしまう企業もあります。
経営者にとっては賃上げや売上確保が優先されがちで、ハラスメント対策は後回しになりやすいのが実情です。
100~200人規模のいわゆる“地元大手”でもパワハラ・セクハラは起こるため、規模に関係なく予防と相談体制の整備は欠かせません。
最近は人手不足の影響もあり、「ハラスメントがある職場は人が辞める」という危機感が徐々に高まり、アンケート調査や相談窓口の提案に耳を傾けてもらえる場面が増えてきています。

質問:資格取得後、どんなメリットがありましたか?

一暁氏:自己紹介で「社会保険労務士+ハラスメント防止コンサルタント」の肩書きを並列して「ハラスメントに詳しい」ということを打ち出しています。
社会保険労務士の資格と「ハラスメント防止コンサルタント」の資格名を併記するとわかりやすくて、認知度・信頼度が上がると思いますね。
職員が「挑戦できる資格」があることで、事務所全体のチャレンジ精神が高まり、相談窓口や顧客開拓にもつながっているのではないかと思います。

質問:ハラスメント防止コンサルタント養成講座や資格取得後受講された公開セミナーは実務にどう役立っていますか?

一暁氏:財団の養成講座は、“現場で役に立つ”という点で他の講座と全く違うと感じています。
一般的なハラスメント研修は、弁護士の先生が裁判のポイントや判例の話をして、「こういうことに気をつけましょう」で終わることが多いのですが、実際の現場では“気をつける”だけではどうにもならない場面がたくさんありますし、そもそも何をどう気をつければいいのかが分からない企業も多いんです。
その点、養成講座は、実際に事案対処をどう進めていくかという“過程”を丁寧に教えてくれる。ここが決定的に違います。
こじれて裁判になってからの話は弁護士の領域ですが、そこに至る前の段階――どう聞き取りをするのか、どう整理するのか、どう着地点を探るのか――この“解決までの道のり”を具体的に学べるのが大きな価値だと思います。

瞳氏:公開セミナーでのロールプレイや事例検討が、自事務所の相談事例への対応にも直結しています。「この対応で本当に良かったか?」を講師の方にフィードバックしてもらえるのも大きいです。

質問:ハラスメント問題における社労士としての役割をどう考えますか?

一暁氏:社労士は裁判に至らない前の段階での「社内解決」「再発防止」「働き続けられる職場環境作り」を目指します。中小企業では人事異動も難しく、事案が起きた時の着地点が難しいですが、一つひとつ丁寧に手続きを進めつつ、再発防止策としての研修・窓口設置まで含めてコンサルティングするのが我々の領域です。

質問:今後の事務所としてのハラスメント業務の方向性を教えて下さい。

一暁氏:今後はまず、防止を強化するために、企業向けの研修の質をさらに高めていきたいと考えています。カスハラ研修も手掛けたいと思っていまして、瞳には、それを担える講師として育ってほしいと思っています。
相談しやすい窓口づくりを実現するため、担当者が見える形での運営や窓口の常設化を進め、顧問先と相談者の方々が安心して利用できる体制づくりを整えていく予定です。
さらに、事案対応にとどまらず、再発防止まで踏み込んだコンサルティングへと業務を広げていきたいと考えています。

――ご協力ありがとうございました。

※左から職員 片境瞳様、代表・社会保険労務士 片境一暁様

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