2026年09月25日
会長コラム
経営戦略とダイバーシティ

ダイバーシティは人材戦略の中核であり経営戦略である、ということはもはや企業の常識となりました。しかし、このことに本当に腹落ちしている企業経営者はそう多くないという現実もあります。企業の人事担当者から、「我が社の社長に女性活躍やダイバーシティ推進に本気になってもらうにはどうしたら良いでしょうか?」と相談を受けることも少なくありません。

ダイバーシティ推進について信念をもって進めている経営者の方々とお話をすると、ダイバーシティの意義を理解し、自社の現状と課題を把握し、推進の効果を知るの3つを持っていることが多いと感じています。言い換えれば、この3つを持つことがダイバーシティの真の理解につながります。

まず、企業がダイバーシティを進める意義は大きく4点あります。
 ① 経営環境の変化に対応しイノベーションにより価値創造する
 ② 少子化の進む中で優秀な人材を確保する
 ③ すべての人が働きやすく能力を最大限発揮しやすい職場となる
 ④ 社会や投資家の要請に応える
いずれも企業や組織を持続的に発展させるために重要なポイントです。

次に、自社の現状と課題の把握です。女性活躍推進法の一般事業主行動計画は自社の状況把握、課題分析を行った上で計画を立てることとされていますが、この状況把握、課題分析はしっかり行う必要があります。例えば、女性管理職が少ない理由の分析や子どもがいる女性がマミートラックに陥っていないか、上司は男女ともに同様に育成しているかなど具体的な課題をあぶりだせるようなアンケート、ヒアリング調査等を通じて把握することが望まれます。

最後に、ダイバーシティ推進の効果を知ること、これが一番難しいところです。

当財団では、8月の公開シンポジウムで「ダイバーシティの経営戦略としての意義と効果」をテーマに取り上げました。基調講演をしていただいた山本勲慶應義塾大学商学部教授からは、ダイバーシティの数々の効果データを示していただき、パネリスト企業の皆様からもダイバーシティが経営戦略に及ぼす効果について語っていただきました。また、内閣府男女共同参画局のホームページにおいても、役員に女性がいる企業のパフォーマンスは高い傾向にある、「なでしこ銘柄」選定企業の売上高営業利益率と配当利回りは東証プライム企業の平均値を上回っている等のデータが紹介されています。

こうした企業全体の効果データを知ることに加え、自社のダイバーシティ推進の効果を把握しようとする努力も必要です。ある企業では、ダイバーシティ推進の効果把握のために隔年でアンケートを実施し、ダイバーシティ推進策の浸透度、推進策の社員への効果、上司の部下男女への指導と部下のエンゲージメントの関係など多角的な観点から分析し、推進策の効果と残された課題を明確化しています。このような地道な努力を繰り返すことにより、効果データも把握でき、トップも腹落ちして適切な対策を組み直すことができるのです。

 ダイバーシティ・女性活躍をブームとして進める時代は終わりました。これからは経営戦略としてのダイバーシティの意義と効果をしっかり検証しつつ、継続して前に進める努力が試される時代になったと思います。

(21世紀職業財団会長 定塚由美子、情報誌「ダイバーシティ21」2026年秋号より)

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