【随想】

「共働き・共育て」が普通にできる社会へ


 「夫も家事をもっと手伝うべき」、「父親も子育てに参加しなくちゃ」という言葉を使うと、もはや時代遅れと言われるかもしれません。どこがおかしいの?という方は、上の言葉の「夫」を「妻」に、「父親」を「母親」に置き換えてみてください。そうです。「手伝う」、「参加する」というのは主体が妻・母親で、夫はその一部を担うというニュアンスの言葉なのです。

 若い世代の男女の意識は急速に変わってきています。大学生を対象とする調査では「育児休業をとって子育てしたい」と回答する割合は、以前には男女差があったのですが、2024年卒業予定の大学生では男子61.3%、女子63.2%とほとんど差がなくなりました(マイナビ調査)。男女共働きで、家事育児も半分ずつ分担していきたいという「共働き・共育て」の希望が男女双方の標準となってきています。
 とは言え、実際にはこの希望はまだ実現できていません。日本の男性の1日あたりの無償労働(家事、子育て他のケア等)時間は平均41分に過ぎず、女性は224分と5.5倍となっています(男女共同参画白書令和5年版)。欧米では1.3~1.8倍の男女比なので、日本の男女差はかなり大きいと言っていいでしょう。男性の育児休業取得率は徐々に上昇してきており2023年度は30.1%となりましたが、まだ政府の目標である2025年度50%より低い状況です。

 当財団が2022年に発表した「子どものいるミレニアル世代夫婦のキャリア意識に関する調査研究」でも、子どもが生まれる前、育児は妻も夫も同じように行うべきと考えていた男性は67.5%でしたが、そのうち半分以上は、現実には実現できていない旨を回答しています。また、上司の考え方が部下の子育て男性の残業時間の長さに影響していることも明らかになっています。
 こうした若い世代の希望、意識の変化に合わない職場の働き方や上司の古い考え方はジレンマを生み、男女双方の生産性を落としたり、離職につながります。

 では、どうしたらいいのでしょうか?

 上記の調査研究のインタビューをもとにした新書「<共働き・共育て>世代の本音」では夫婦ともに家事・育児を担いながらキャリア形成しているカップルの努力と支える企業の事例を紹介しています。また、本年8月26日には、当財団のシンポジウムにおいてデュアルキャリアカップルの支援策が議論されました。取組みの重要な柱は①初期キャリアの段階から男女ともにキャリア意識を高めること、②カップルそれぞれの勤務先で柔軟な働き方の選択が可能であること、③管理職の意識改革(父親と母親へのアンコンシャスバイアス改革等)です。

 こうした取組みが進み、一日も早く共働き・共育てが普通にできる社会となり、「父親の子育て参加」や「イクメン」という言葉を使う必要がなくなる日を待ち望んでいます。

(21世紀職業財団会長 定塚由美子、情報誌「ダイバーシティ21」2024年秋号より)

前のページに戻る