【随想】
女性国会議員比率とその意義

7月に行われた参議院議員選挙の女性当選者数は42人で、全当選者に占める割合は33.6%、人数、割合とも過去最高となりました。女性の候補者数は152人で全体の29.1%でしたので、女性候補者の方が当選した割合が高かったことになります。非改選も含めた参議院議員全体では73人、29.4%となりました。衆議院議員についても、昨年10月の総選挙の結果、女性は73人、15.7%と過去最高になりました。
とは言え、世界の中でみると、ご承知のとおり日本の女性国会議員比率はまだまだ低い現状です。IPU(列国議会同盟)の公表資料によると、日本の順位(衆議院議員女性比率15.7%)は185か国中142位です。他のG7諸国と比べると、イギリス40.5%、フランス36.2%、ドイツ35.7%、アメリカ28.7%などと大きな差があります。
実は、他の国々も昔から女性議員比率が高かったわけではありません。2000年には、米英仏はいずれも10%台でした。日本も7.3%でしたので大きな差があったわけではありません。その後の25年間でこれらの国の比率は大幅に上昇したのです。その大きな後押しとなったのが各種の「クオータ制」でした。
フランスでは2000年に「パリテ法」が制定され、各政党に男女同数の候補者擁立を義務付けました。イギリスとドイツは、いずれも、政党の自発的なクオータ制で女性議員比率向上を図ってきています。
女性議員を増やすことにどのような意義があるのでしょうか。秋山訓子氏は著書『女性政治家が増えたら何が変わるのか』(集英社新書、2025)において、「シンプルに、人口の半分は女性なのだから」「そして、女性議員を増やすということは、それまで日が当たっていなかった問題に光を当てて可視化し、課題として認識させ、さらに対応する施策を作って解決に至らせるという意味がある」と述べています。経済界でのダイバーシティの必要性と同様の要請が政治にもあり、さらに政治においては、人口の半分である女性の代表が求められるということだと思います。
これまでも、女性議員がリーダーシップを発揮して成立した議員立法は数多くあります。DV法、児童買春・児童ポルノ禁止法、困難な問題を抱える女性支援法などがその代表例です。これまで注目されてこなかった分野の制度や政策に変革を促していけることが、女性議員増加の意義の一つです。もちろん、すべての分野の議論に男女が参加していくことが重要であることは言うまでもありませんが。
日本でも、2018年に「政治分野における男女共同参画推進法」が制定・施行され、2021年には改正されています。この法律では、「男女の候補者の数ができる限り均等となることを目指す」としており、政府目標も2025年までに35%と設定されました。しかし、今回の参議院選挙でも、女性の候補者比率は29.1%に留まっています。政党によって差があり、特に与党である自民党は21.5%、公明党は20.8%と低かったことは残念でした。
まずは、イギリスやドイツのように各政党が自発的なクオータ制を進めていくことを期待しています。また、DEIを進めたいと考える立場から、各政党について女性候補者数だけでなくその主張の中身を含め、しっかりチェックしていきたいと思います。
(21世紀職業財団会長 定塚由美子、情報誌「ダイバーシティ21」2025年秋号より)