【随想】

自治体・企業トップのハラスメント


 最近、自治体や企業のトップ・役員がハラスメントを行ったという不祥事が後を絶たない状況です。セクハラもパワハラも、優越的地位にある者から行われやすい実態があります。

 トップとしての倫理観を大切にし、権力を持つ者はともすれば自己中心的な考えに陥りがちであるという危険性を十分に肝に銘じて行動していただきたいと思います。

 トップ本人の責任が大きいことは言うまでもありませんが、組織としての課題も山積みです。自治体にも企業にも男女雇用機会均等法・労働施策総合推進法によりセクハラ・パワハラの防止義務が課されており、それぞれ相談体制の整備や研修等の対策を講じているはずですが、トップのハラスメント行為の場合、そうした防止・対応策が効いていない場合も多く見られます。福井県前知事のセクハラに関する報告書においては、相談を受けた上司が真剣に対応しなかった、相談窓口が機能していなかった、被害を通報しにくい組織風土があるなどと指摘されています。

 各組織においては、トップのハラスメントも起こりうるという前提で以下の通り対策を見直す必要があるでしょう。

①まずはトップ、役員を含むハラスメント研修を実施し、組織としてのハラスメントの撲滅と同時に自らを律する心構えを持っていただくことが大切です。

②トップが加害者であっても適切に対応できる相談体制を整備する必要があります。独立した相談体制や外部相談窓口の活用が考えられるでしょう。ちなみに当財団では、トップ(つまり私です。)によるハラスメントが起こった場合の相談対応のフローチャートを作成し、外部相談窓口も設けています。

③職員・社員へのアンケート調査も予防策、早期発見策として有効です。ハラスメントの経験を聞くだけでなく、ハラスメントを受けた場合に相談したか、相談窓口は信頼できるか等を併せて聞くことで体制が適切かどうかの判断材料となります。定期的なアンケート調査を行うことで、課題や対策の効果・進捗状況を把握することもできます。当財団でもご依頼に応じ調査・コンサルティングを行っています。

 ハラスメントの起こりやすい組織は、職場風土に特徴があります。上司と部下とのコミュニケーションが少ない、失敗への許容度が低い、残業が多い・休暇をとりづらい等の特徴がある職場ではハラスメントの経験率が高くなっています。またハラスメント防止規定が制定されていない職場もハラスメントが起こりやすくなっています。

 各組織のトップの方は、自らの行為がハラスメントとなっていないかを常に省みるとともに、組織のハラスメント対策を講じ、ハラスメントの起こりにくい、風通しの良い職場を作る責任を果たしていく必要があるでしょう。私たち財団も必要なお手伝いをさせていただきます。

(21世紀職業財団会長 定塚由美子、情報誌「ダイバーシティ21」2026年春号より)

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