ハラスメント防止コンサルタント養成講座・認定試験
講師陣が語る講座の魅力と学習方法

多様化の社会では意見の相違が 
あることを前提にハラスメント対策を

布柴 靖枝 氏
文教大学人間科学部臨床心理学科 教授、文教大学大学院人間科学研究科 研究科長、 (公財)21世紀職業財団 特任講師

 

―先生は専門家として多くのハラスメント問題に対応されていらっしゃるかと思いますが、ハラスメント防止に取り組む意義をどうお考えですか。

 「私は公認心理師・臨床心理師として多くの職場でカウンセリングを行ってきました。希望を持って入社したのに、上司や同僚から人格を傷つけられるようなことを言われたり、長時間労働の中で疲弊してしまったりして、どんどん元気がなくなっていく人の姿もたくさん見てきました。また、当事者だけの問題ではなく、職場の環境も悪化させるなど、ハラスメントは百害あって一利なしです。
 今、多様化の社会と言われていますが、ハラスメント防止対策というのは、多様な考え方、価値観を持った人が同じ職場で同じ仕事をすると、意見の相違が生じて当然ですし、そこで一歩間違うと人間関係が悪くなるということを前提にしておいた方がいいと思います。なので、そういうことが起こらないようにするために組織としてどういうふうに対策を取ったらいいのか、そこを抑えておくということがハラスメント防止だけでなく、組織・会社の発展につながっていくのです。被害者の声は組織を改善していくための重要な提案と認識してしっかりと耳を傾け、ハラスメントが起こらないような環境をつくっていくことは、組織全体の活性化につながると感じています。」

―先生のご担当される「カウンセリングとメンタルヘルス」の魅力と学習のポイントを教えてください。

 「大きな話になりますが、私たちは親から命を受けてこの世に人間として生まれて何を目指しているかというと、よりよく生きたいとか、幸せを目指しているんじゃないかな、と思うんで すよね。ですから、私は講座の最初に皆さんにとって幸せって何なんですか? という問いかけから始めています。幸せの形というのはどれが正しくて、どれが間違っているというのはない。絶対の答えはないと言われているんです。一番大事なのはその方ご自身がどう捉えて自分自身の生き方を自己決定できるか、それがとても重要なんです。
 ハラスメントを受けているというのは、望んでいないことを無理やり強要され、その自己決定権が一方的に奪われた状況に追いやられている状態と言えます。講座ではこのことを念頭においたうえで、ハラスメント問題に対応する相談員に必要なカウンセリングやメンタルヘルスの基礎知識と最新情報、コミュニケーション技法、面接時の注意点などについて実践的に学べるように心がけています。」

―先生は国際的な活動もされていらっしゃいますが、そういった見地から、ハラスメント防止コンサルタントにどのような役割を期待しますか。

nunoshiba02.jpg 「私の専門は家族心理学なんですが、カウンセリングを通じて目の前の家族をサポートしながら思い至ったのは、結局家族の問題というのはジェンダー不平等だとか人権問題だとか、そういったことの社会の縮図であるということです。社会をよくしないと家族の問題もよくできないと思い国連の活動を始めたのですが、人権問題については欧米諸国に比べると日本は非常に遅れています。
 ハラスメントというのは人権問題ですので、そこに関わるというのは非常に重要な仕事だと思うんですね。専門的な知識を得て、資格をとり、そういった仕事をしようという人が増えてくれることはうれしく、心強く思っています。ある意味世の中を良くしていくためのお手伝いをしようとしてくださっている方々だと思います。
 言うまでもなく、ハラスメントに関する法令はどんどん厳しくなっていっていますので、一旦資格を取ったからといってそれでOKではなくて、常に学び続ける姿勢を持っておくことが必要になります。毎年毎年知識を更新しながら、そして実際の案件があった時にどのようにしたら本当により良い解決ができるのか。これも勉強したり、現場で経験を積んだり、あるいはスーパーピジョンを受けながらスキルアップをしていくということがとても重要になるかと思います。ですので、資格を取ったからOKではなくて、資格を取ってからがある意味本番が始まるという捉え方をしていますので、資格というのはまずスタートラインに立った、そしてその仕事が専門的にできるところに立ったというふうに、ご理解いただいて、一緒に勉強していけたり、スキルアップできる機会が持てると嬉しいなと思っています。」


― その他の講師陣からのメッセージ ―

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