女性交流会 実施報告

第12回 明日のビジネスを担う女性たちの交流会 in 大阪

<開催日時>2024年9月19日(木)15:00~16:30
<開催形式>Zoomでのオンライン開催(関西事務所主催)

 


 今年度もオンラインで開催し、約200名が参加されました。女性役員3名をパネリストにお迎えし、弊財団関西事務所長の佐野由美のコーディネートで、パネリストが仕事で自分が成長できた実感や、立場の違いを乗り越えてwin-winの関係を築く醍醐味など、具体的なエピソードをユーモアを交えて語って頂き、参加者は一つ上のポジションや一歩先のキャリアに進むためのエネルギーをいただきました。

大阪交流会

当財団 関西事務所長 佐野由美

■パネリストからのメッセージ

杉本 仁美 氏(株式会社りそな銀行 取締役 監査等委員)
 

 銀行の支店では、お客様の声を聞きながら現場感覚を身につけることができ、本部では会社の戦略に触れて銀行の方向性を確認することができ、それぞれを経験することにより、バランスよくキャリアを歩んでこられました。

 突然法人営業へ異動になった時は、本当に辛くて大変で「営業なんか無理だ」と思いましたが、お客様の感謝の声を直接聞くことができ、とてもやりがいを感じ、自分の知らない世界を知ることの重要性を知りました。

 部門長としてダイバーシティ推進室長、支店長、その後本部の部長を経験し、2021年に役員に就任した後、去年から取締役監査等委員を拝命しました。このポジションは、経営陣や執行部門のモニタリングを通じて、内部統制システムがしっかりと機能しているかを監査・監督する役目で日々勉強中です。

門脇 あつ子 氏(大阪ガス株式会社 執行役員 兼 京都リサーチパーク株式会社 代表取締役社長)

 

 今、京都リサーチパークで社長していますが、2年前まではずっと大阪ガスで仕事をしてきました。入社してガス機器等の新商品の企画を、次にガスを供給する導管部門で業務改革のリーダーを、その後全社技術戦略を担当した後、中央研究所に当たる部門の企画チームで管理職になりました。

 理系でしたのでどこへ行っても「女性初」でしたが、実はあまりそれを意識することなく4つの事業領域で様々なキャリアを積んでこられたと思います。

 子どもが3人いるんですが、家庭と仕事の両方をやることで、私にとってのバランスというか、どちらにも言い訳しながら息抜きしながらやってこられたかなと思っています。

松尾 友佳子 氏(阪急阪神不動産株式会社 執行役員 住宅事業本部 住宅事業企画部長)
 

 阪急電鉄(当時)に女性総合職2期生というポジションで入社しました。不動産部門でマンション開発を担当した時、近隣協議で苦労して帰宅も遅くなり、子どもにも子育てを手伝ってくれた親にも迷惑をかけました。

 次にニュータウン開発を担当し、規模の違いに圧倒されながらも新しいコミュニティ支援や住宅開発の新しいアイデアを取り入れるのが面白く、今の自分につながっています。

 管理職に昇格してから3回目の育児休暇を取ったのは私が初めてで、部下を抱えながら育児休暇を取る後ろめたさや不安がありましたが、その後、部長に昇格し、住宅事業本部の経営セクションにいます。昨年執行役員になりましたが、わが社では女性は私だけなので、今後さらに上を目指す位置づけにいる中で、日々精進しないといけないと思っています。


■一皮むけた経験■

  •  業務改革の時、サプライチェーンの各社利害が対立する場面も多かったけれど、少しずつwin-winになるように調整をしていくときに、それまで自社の常識でしか仕事をしてきていなかったことを痛感しました。自分の常識とは異なる壁にぶつかったことはすごく自分を成長させてくれました。【門脇氏】
  •  顧客対応で、住宅地にマンションを建てるときは、反対運動にも遭いました。工事開始の承諾を得るために周辺の全住宅を回る中で「もう阪急百貨店で買わない」「阪神電車に乗らない」と言われたりすると、私の対応によって阪急阪神ブランドを棄損するリスクもあると感じました。【松尾氏】

■キャリアに好影響を与えてくれた人響■

  •  先輩から、「会社の仕事というのは、考える:実施する:発信する、この三つが揃ってこそ仕事だけど、この比率は絶対1対1対1だよ」と言われました。「考えてばっかりで行動しない人、深く考えず動いてばかりの人がいるが、大事なのは伝えるだ」。しかも「仕事なので自己満足にならないように。伝える先は上司かも、同僚かも、お客様かもしれないが、ちゃんと相手に伝えることだ」と。何気ない会話の中で聞いたんですが、今も私はこのバランスについて考えているので、いい言葉をくれるいい先輩に出会いました。【門脇氏】
  •  新入社員時代の直属の上司が、「男女差別はダメだが男女区別はいいよね」と言ってくれました。総合職で入社した当時、女性をどう扱っていいかわからない上司がたくさんいて、同じミスをしても男性と女性では叱り方が違う人がたくさんいた中、この上司には公平に何度も𠮟られ鍛えられました。もう一人は、法人営業時代に、取引先の社長さんに「どうしてうちの担当が女性なんだ?代えてくれ」と言われた時、「彼女の仕事ぶりを見てから言ってくれ」と抗議をしてくれた上司です。この上司の顔を潰さないように、お客様にも認めてもらえるように、あの時の言葉に支えられて頑張れたと思います。【杉本氏】】

■上のポジションを目指す・引き受ける時の考え方■

  •  私は「先頭に立ってリーダーシップなんか発揮できない」と思っていましたが、研修で「自分の強みを活かしたリーダーシップを見つければいい。先頭に立って旗を振れないのであれば、それができる部下に旗振りは任せて、自分は自分のスタイル(サーバント型)でリーダーシップを発揮すればよい」と腹落しました。役員や部長など様々なポジションがありますが、そのポジションに就いた時はみんな初心者です。ポジションが与えられた時には、自分だからこそできることは何かを考えるようになりました。力不足の部分を補うために努力は必要ですが、自分なりの役割の果たし方を意識しています。【杉本氏】
  •  管理職というのはテコの原理というか、自分ができなくても、できる人をマネージメントしてその人の力を最大限発揮できる環境を作ることだと思います。情報通信の部長になったときは大変でしたが、メンバーが力を発揮できる環境を作る管理職としての醍醐味を味わい、すごくやりがいを感じました。部長をやるときには心配しなくても部長なりの情報や権限が与えられ、部長だから会える人もいて、社外ネットワークもどんどんレイヤー(層)が変わり、そこからいろんな刺激や貴重な情報ももらえて、ちゃんと環境が整えられることを実感しました。【門脇氏】
  •  管理職を躊躇する女性には「同じ年代の男性に、『自分が管理職になるには力不足です』なんて言う人は絶対いない。女の人の方がより家庭と仕事のバランスの中で負い目を感じ、昇進を断る傾向がある。だから自信持って頑張ったらいいんだよ」という話をして背中を押しています。自分が部長や執行役員になったときは視座が上がりました。管理職は自分の目の前の部下をどうケアしてチームとしての成果を引き出すかに注力しますが、部長や執行役員のような全体を見るポジションになると、この部門の活性化や企業価値をどう上げていくかというふうに組織全体を見渡して改革や提案ができる面白さが感じられます。【松尾氏】

■ライフとのバランス■

  •  子どもたちが働く世代になって「やっぱりオカンすごいことやってきてるなあ」と言われると、頑張ってきてよかったなぁと思います。私は子どもがいたことで、うまくバランスをとりながら来られたと思います。地下鉄の改札を入ると仕事モードで、改札出たら“オカン”モードに切り替えます。【松尾氏】
  •  自分では切り替えてうまくやっていたつもりでしたが、早く帰るために殺気立って仕事をしていたこともあったようで、後になって親しい友達から「門脇さんて怖いって言われてるから気をつけた方がいいよ」と言われたことがありました。(常に完璧なバランスを目指すよりは)人を傷つけない限り、必死の時は、少々バランスが崩れても仕方がないと、思うのもよいかもしれません。【門脇氏】
  •  銀行は時短で働いている人が多いので、そうじゃない人に負荷がかかっているのが実態です。私が病気で休んだとき、当時はかなりガッツリ仕事をしていたんですが、自分がいなくても会社は回る、逆に自分の健康を会社は守ってくれないと思い、自分の私生活や心と体の健康のバランスの大切さを実感しました。また、他の人の仕事を手伝うことによる負荷で気持ちにも余裕がなくなっている人のストレス解消も大事ですね。【杉本氏】

■参加者からの質問「女性活躍を促進するためには、どのような働きかけが有効か」■

  •  トップの本気度を醸成することが重要だと思います。何か企画した時には、会長・社長のスケジュールを秘書に確認して、5分でも隙間時間があれば「今ちょっと行っていいですか」と説明しに行くゲリラ作戦をやりました。すると近くに座っている他の役員も聞き耳を立ててくれるので次々に説明ができ、例えば、「土曜日にイベントがあるので、来てください」と事あるごとに役員を引っ張り出していました。【杉本氏】

■参加者からの質問「次のステップに、自分から上に行きたいと思う時に、どのように会社にアピールしたか」■

  •  管理職登用について評価する人は自分以外の人の意見も聞きたがるので、目の前の上司だけではなく周りの協力者を、自分を後押ししてくれるような人を探し、場合によっては他者から「この人、こんないいところがあるよ」みたいな話が聞こえてくると違う側面で評価が上がることもあるので、そういう外野の味方を増やすこともいいと思います。【松尾氏】

■参加者へのメッセージ■

  •  美容の記事で、「40の坂、45の壁、49の崖(坂から転がり落ちて壁にぶち当たって崖から落ちるぐらい、みんな老化していきます)」という話を読んで、仕事で逆手にとると、「40代はがむしゃらに坂道を登って45で壁をブレークスルーして、その後崖にぶち当たったらもう飛び降りる、決断力しかない」みたいにポジティブに捉えると、また違った景色が見えるんじゃないかなと思います。自分だけで頑張りすぎないで、味方を増やして活躍していただきたいと思います。【松尾氏】
  •  管理職になりたがらない人が多いという話では、「なれなれ」と周りが言い過ぎている気もしますが、そういう機会があるのなら、ぜひなってくださいと伝えたいです。なった人は「面白い」と思っていても、なかなか自分の仕事が楽しいということは他の人に言いにくいんです。仕事は管理職でも、担当者でも、しんどいことはあるので、管理職になったら大変なことだけが山ほど増えるというよりも、楽しいことも山ほど増えますし、今とは違う環境も整えてもらえます。管理職だけがいいという価値観ではないんですが、チャレンジする価値はあるので、ぜひトライしてください。【門脇氏】
  •  私は運と縁とタイミングが重要だと思っていて、その根底にあるのが努力や自分磨きだと思います。これはキャリアや人との出会いなど、いろんなケースで当てはまります。日頃から努力して、良い行いをしていると、結構運に恵まれ、それなりの努力をしていると、それなりの縁と結びつきます。「チャンスの神様は前髪しかない」と言いますが、そのタイミングが来たときに準備ができている状態にしておくというのは非常に重要で、やはり努力しておくことだと思います。役職が上がるほど、だんだん自分らしさに気づけるようになり、「自分スタイルでいいや」と思えるようになりますので、ぜひ皆さんも自分磨きをしながら頑張ってほしいと思います。【杉本氏】
参加者の声

 実体験で苦労を乗り越えた話や、リーダーとして発揮する術は人それぞれ違ってよいことなど、心に刺ささりました。ポジションが人を変えることを、もっと社内でも伝えて人材育成へつなげていきたいと思います。

 ひとつ上のポジションを上司から打診されて、「本当にやっていけるのか」「自分でよいのか」迷っていましたが、今日の皆様のお話を聞いて、「今がそのタイミングなのだ」と前向きな気持ちになりました。

 自分自身、職位が上がったことに対する戸惑いや不安や「なぜ私が」と思っていたので、お三方の話を聞いて納得できるところが多々ありました。多くの女性が気負わずに力を発揮できる環境を、これから整えていきたいと思います。