女性交流会 実施報告

第11回 明日のビジネスを担う女性たちの交流会 in 大阪

<開催日時>2023年9月20日(水)15:00~16:30
<開催形式>Zoomでのオンライン開催(関西事務所主催)

 


 今年度もオンラインで開催し、約190名が参加されました。女性役員3名をパネリストにお迎えし、コーディネーターの弊財団関西事務所長の佐野由美より、いくつかのテーマや質問を投げかけ、各パネリストのこれまでのキャリアの振り返りを通じて、難しいオファーに躊躇しながらもチャンスを掴む心構えや、上司部下とのかかわり方、自分自身の視座の持ち方など、具体的なエピソードの中から、参加者が一つ上のポジションを担っていくための勇気をいただきました。

大阪交流会

当財団 関西事務所長 佐野由美

■パネリストからのメッセージ

樋口 敦子氏(住友ファーマ株式会社 常務執行役員 渉外、秘書、人事担当)
 

 住友化学に研究職として入社しましたが、配属が医薬の研究部門だったので、部門ごと住友製薬に転籍し、その後、他社との合併も経験しました。その後、研究職から広報部門に異動になり、海外事業も経験するなど、幅広く業務を経験しました。

 研究部門から本社部門に異動し、海外の製薬会社との提携業務を担当することになった際、前任者から十分な引継ぎを受けることができず、過去の経緯を確認しながら、毎日山のように届く英文メールに返信していくという時期の“必死になって泳いだ”経験が、「大変なことでもなんとかなる」という自信につながったと思います。

 また、広報部門で部長のオファーをもらったときは、それまで部長になることなんて全く考えたこともなかったので、泣きそうになって、過去に一緒に仕事をしたことのある役員にも相談したり、いろいろ悩んだ末に引き受けました。自分が実務に精通していない業務で判断を求められるポジションに置かれて苦労しましたが、視野は広がりました。

影浦 智子氏(オリックス株式会社 執行役 コーポレート部門 企業法務管掌)

 

 入社以来、主に法務やコンプライアンス、監査など企業法務の仕事をしてきました。商法から会社法への大きな法改正があったときは、社内規定や制度設計の変更のみならず、グループ会社のガバナンスに至るまで広範囲にわたる業務を、一つ一つ関係部門と連携して取締役会に諮るまで、期限もある中で歯を食いしばって働いたとき、大きな達成感を感じました。

 また、上司が急に異動してしまい、役員が直属の上司になった時期もあり、気軽に何でも聞ける環境でなくなったため、一段目線を上げて「どうしたらいいでしょうか」ではなく「自分はこうしたいと思うけれど」というように、相談の仕方を変えるといった経験が自分の成長に結びついたと思います。

富澤 五月氏(西日本旅客鉄道株式会社 理事 近畿統括本部副本部長 和歌山支社長)
 

 私が入社した当時は女性が非常に少ない職場でしたが、岡山、神戸、和歌山、博多といった現場と、運輸や人事といったスタッフ系の業務の両方を経験できた上に、さらにJRグループのホテルにも出向するなど、弊社の中では幅広いキャリアを歩んできました。

 キャリアを重ねる中で、人財育成に携わりたいという希望をかねてから持っていました。新卒の採用も増え、若手社員が車掌や運転士として活躍しはじめた頃ですが、自分には車掌経験がないにもかかわらず90人の車掌が在籍する現業機関で係長になったときは本当に苦労しました。車掌業務を車掌からも学びつつ、業務を全体としてとらえる努力も重ね、「これはオカシイのでは?」と思ったときは、単にオカシイと言うだけでなく「こうしたらいいのではないか?私の提案が間違っていたらアドバイスしてほしい」と前に進める形で周囲とやり取りしました。「同僚や車掌に共感してもらい、チーム力を発揮するためにはどう伝え、動いたらよいのか」について、じっくり考える機会だったと思います。


■キャリアに好影響を与えてくれた人■

  • 母の看護が必要になり、職場と実家を往復する日々が数か月続き、仕事をしばらく休もうかと上司に相談したところ、「あなたの人生は自分で決めたらいいけれど、仕事とプライベートは0対100じゃないだろう。だから休むとか辞めるとか、全部100%頑張り切るということではなく、その時々に合わせて配分を変えたらいいんじゃないか」「休むとしても仕事との接点は持っておいた方がいい」とアドバイスしてもらったことが、今でも自分に響いています。上司という立場になり社員から相談を受けることも増えましたが、このときのアドバイスを軸にして社員に向きあっています。【富澤氏】
  • 入社した時の上司がとても厳しい人でしたが、ある程度任せてくれる人でもあったので、与えられた仕事に食らいついていくスタンスで働きました。自分だけで考えたら、まあこれくらいでいいかというレベルに対して、もっと難しいボールを投げてこられたので、何とか打ち返そうとして仕事のキャパシティが広がったという経験があります。また、会社合併をした直後の上司が相手方の会社出身者だったのですが、非常にフラットな人で、どっちの会社だからということもなく、他部門と揉めたときには一緒に行って交渉してくれたりととても助けられたので、自分もどんな相手でも協力しながら仕事をするスタンスを学びました。【樋口氏】
  • 専門性の高い業務だと、異なるバックグラウンドの人と一緒に働く機会が少ないのですが、珍しく30年ずっと営業だったという人が上司になったときに、「組織とは、細かい業務ではなく人をマネジメントするものだよ」と言われ、それまで自分もつい細かいところが気になってしまっていたので、人を見て、その人のいいところをいかに伸ばすか、苦手なところをどうお互い補い合うか、そういう組織として動くことの大切さを教わりました。【影浦氏】

■役員になった時の苦労や、なってからの影響■

  • 広報で役員になりましたが、会社の中のポジションが一段上がると、視野が、見えるものや入ってくる情報は全然違うので、ホライズンがパッと広がったという感じがすごくて、今だから綺麗な言い方してますけど、そういうことで自分自身のものの考え方とか、会社がどういうふうに動いてるんだとか、広報ですから会社のことを社外の、アナリストや記者に説明するという立場に置かれたことによって、会社がどういうふうに成り立っていて、何を目指して、どうしているんだということが理解できたし、それによって自分の果たすべき役割も認識できたと思います。そして私みたいな人でも、部長・役員になっていると他の人が思ってくれていたとしたら、それは好影響かなと思います。【樋口氏】
  • 和歌山支社長を任命されたとき、腰を抜かすくらい驚いて、すごく高い下駄を履かされたんじゃないかと、着任までの1か月あれこれ悩みました。でもいよいよ着任の時期が迫ってきたら、「高い下駄なんだったら今はちゃんと履けなくても1・2年かけて履きこなしたらいい」「選んだのは会社じゃないか」と腹をくくりました。支社長という仕事は特に地域共生という役割があり、自治体や地元企業の皆様との接点が多いのですが、和歌山支社では初めての女性の支社長ということもあり、支社のメンバーから聞くところによると、この人はどんなことを考えてるんだろうと関心を持っていただいているようです。関心を持っていただけているとしたら、非常にありがたいですし、これからいい影響を社内外に巻き起こせればと思います。【富澤氏】
  • 私は社内の人事異動の流れの中で内部昇格で役員になり、それまでに部門長経験も1回、3年間だけでしたので、なかなか経営視点が持てずにいました。「会社として、グループとしてどうあるべきなのか、あるべき姿は何なのか、ありたい姿は何なのか、そこから引き戻してじゃあ今は何をしなければいけないのか」と考えるように何度も言われました。自分では一つ上の目線を持つことを意識していたのですが、今から思えば奥行きが足りなかったと思います。なるべく俯瞰して足元の小さいことにとらわれすぎないスタンスは今のポジションになってからの新しい気づきで、自分にとっても大きな変革です。女性役員ということについては、まだ数が少なく、今自分がこのポジションに「いる」ことが必要だと思うので、一人でも増えるように、仮に歯を食いしばっていても、笑顔で頑張っていけたらと思います。【影浦氏】

■男性中心の職場で女性がキャリアを伸ばすには■

  • 子どもができたときに女性側に負担がかかるのは事実なので、育児で休む前に、「この仕事を面白い・続けたい」と女性が思えるように、重要な仕事を意識的に男性より早めに女性に任せること。上司と本人の意識を高めてもらうことが大事だと思います。【樋口氏】
  • 男性は上下関係を気にしすぎて違う意見を言うのを少し躊躇する傾向がありますが、敢えてそうした雰囲気に合わせることなく、「私はこう思う」と自分の考えを伝えていくことが大事だと考えています。女性の得意分野(コミュニケーション力や共感力)を少し意識して、社内論理ではなく、社員やお客様のためにという視点で動くことを心がけています。【富澤】

■参加者からの質問「職場の業務改革に取り組む中で、部下が従来のやり方に固執して新しいチャレンジになかなか賛同してもらえないときはどうすればよいか」■

  • 大きな所帯になると全員が同じ考えを持つことは難しいので、何を目指すのかを、ぶれずに言い続けること。「共感しなくても納得する」「しょうがないからやる」という人もいます。個人の見解ですが、グループの3割が賛同してくれたら組織として動くと思っています。また、総論賛成各論反対のようなケースでは、細部でいろんな意見が出ても、ゴールイメージを確認し続けていけば前に進むのではないでしょうか。【富澤氏】
  • 部下には部下の考えがあるかもしれないので、従来のやり方がなぜ良いと思うのか、まずは相手の話をしっかりと聞くことが大事。自分の話を聞いて欲しい時は、先に相手の話を聞くことを心がけています。【影浦氏】
  • 何か新しいことを取り入れようとするときは、その先にある素晴らしい未来やメリットをしっかり見せてあげるとよいと思います。【樋口氏】

■参加者へのメッセージ■

  • オファーがあったら、ぜひ受けて下さい。知らない自分に出会えます。できない人に会社はアサインしませんから。引き受けて、子どもができたらどうしようとか、夫が転勤になったらどうしようとか、女性は先々の心配をしがちな傾向がありますが、「そうなったら、なった時だ」というぐらいの腹のくくり方をしてぜひ受けていただきたい。そして、受けた後も100%やろうと思わないで、頑張りすぎないで、自分が今できることをちゃんとやって、それでもできなかったら助けてくださいと言いまくって、助けてもらうことも恐れずに頑張ってほしいと思います。【樋口氏】
  • 自分の限界を自分で決めてしまうことなく、あれかこれかではなくて、あれもこれもと、ぜひ積極的にいろんなことにチャレンジしてほしいと思います。これから先、出産や介護等、いろいろな転換点はあるでしょうが、30年以上働くことを考えると、長い会社人生の中のちょっとした変化なんじゃないかな、と捉えることもできると思います。その時々でやれるだけやってみて、バランスを変えながら、しなやかに前に進んでいただきたい。そして健康第一で、心身ともに健やかに、自分が築き上げてきた一つ一つのキャリアがかけがえのない財産なので、自信を持って一歩一歩前に進んで欲しいと思います。【影浦氏】
  • できないことが頭をよぎり、なかなか前に進めないことがあると思いますが、できないときこそ、まさに気づきをたくさん得て成長している時だと思ってください。今迷ったり悩んだりしている人は、ご自身が一皮むけるチャンス、あるいはもう一段上の景色を見るきっかけだと思って、少し長い目で一歩ずつ歩んでいただけたらと思います。【富澤氏】
参加者の声

 これまでがむしゃらに頑張ってきましたが、頑張りすぎず、もっと気楽に、自分のできることから取り組んでいっていいんだなと、良い意味で肩の力が抜けました。また、今後自分には過ぎる役職や役割を与えられたと感じる機会があったら、成長できる機会と捉え、まずはそのオファーを受けてみようという勇気も持てました。

 「下駄を履きこなす」ことができれば良いのだ、と発想の転換に感動しました。管理職になったら、責任も多くなりますが、裁量権も増え動きやすくなると考えています。「管理職になりたくない」ではなく「管理職になるとこんなに楽しいよ」というメッセージが発信できるようになったら良いですね。

 まだ日本では女性役員が少ないと言われますが、こうやって女性役員から直に話を聞ける時代が来たのだと思い、その機会に恵まれたことを嬉しく思いました。この経験は必ず活かせる日が来ると信じて、どんなことがあっても仕事を辞めずに頑張りたいと思えました。

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