【スーパーバイザーコラム】ハラスメント対応A to Z《第2回》

「傾聴」をビジネスに生かす


 管理職研修などで、傾聴は定番のコンテンツです。しかし聴くことの重要性はわかっていても、仕事中そんな悠長なことは言ってられない、今さらキャラに合わない、となかなか実践に至らない方が多いのではないでしょうか。

 管理職の方に「聴く」ことがあまり馴染まないのは、その業務の性質上、当然のことです。なぜなら、管理職は「聴く」より「訊く」場面が多いからです。ちなみに「訊く」は本来、矢継ぎ早に聞くという意味があり、英語ではaskに相当します。
 一方「聴く」はまっすぐな心(つくりの部分は「直」と「心」)で先入観なしに聞くという意味で、英語ではlistenに当たります。
 通常、上司の方が部下の方と話す際には、いろいろと任せている仕事の進捗を確認しようとしますから、コミュニケーションはおのずと訊くことがメインになります。頭の中の「自分の知りたいことリスト」をどんどんチェックしていくイメージで、限られた時間の中でまずは相手の話を聴くなんて無理、と思われるのもごく自然なことでしょう。

 ところで、わたしたちは話をするとき、相手を選んで話しています。頭ごなしに否定したり、自分の話しかしなかったりする人への相談はつい後回しになり、とりあえず聞いてくれる人に話したくなるのが人間と言うものでしょう。部下の方の心情を想像すれば、相談しづらい話であればあるほど、まずは話を聴いてくれる人になんとなく相談するでしょうし、その結果情報はそこに集まり、上司が知るのは最後、ということが起きてしまいます。
 しかし情報が集まれば、それだけ問題解決のチャンスが増えるのです。そう考えると、いわゆる聴き上手になることは、ビジネスにも大いに役立つと言えます。

 傾聴のコツには、

  • 言葉の背後にある感情を受け止め共感してフィードバックする
     (「そんなことがあれば誰だってびっくりしますよ」「大変だったよね」)
  • 相手があなたを信頼してくれたことに感謝する
     (「話しにくいことを話してくれてありがとう」「相談してくれてよかった」)
  • 時間的・物理的環境に配慮して話しやすい場を作る
     (長く聞こうとするよりも集中して聴ける時間を設定して、プライバシーに配慮する)
  • 非言語メッセージに気を付ける
     (相手と自分の姿勢やしぐさ、表情に注意する)

などがありますが、特に気を付けたいのが、

  • 相手が言い終わるまで聴いて話をさえぎらない
     (お説教・アドバイスは控える)
  • 傾聴モードを日常のやり取りに取り入れる
     (「聴く」と「訊く」を切り替える)

です。

 ビジネススキルとして傾聴を実践して、職場の問題解決力をアップしましょう。

(スーパーバイザー八木亜紀子、2021/7/8掲載)


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