【スーパーバイザーコラム】ハラスメント対応A to Z《第25回》
ハラスメント被害者対応の留意点
ハラスメントは放置すると確実に悪化します。時間が解決する、ということはまずなく、より深刻に、より頻繁に、問題行動が繰り返されるようになります。早期介入が重要とされるのはこのためです。
被害者は案外、ハラスメントを受けている自覚がないことは、以前触れました(第13回「当人同士では気付けないハラスメント」参照)。そのため、事案が発覚する前に被害者にピンポイントでケアをするのは難しい場合が多いでしょう。他のスタッフと同様に、1on1などを行ってフォローするのが現実的です。
一方、被害者の状態が非常に深刻な場合もあります。①明らかに普段より仕事の効率が落ちていたり、②勤怠が乱れたり、③身だしなみや表情が変わったりすることもあるでしょう。④「消えたい」「死にたい」など口にしたり、⑤カッターナイフやドライバーを持ち出す、無茶な運転をするなど危険行為に及んだりすることもあるかもしれません。こういった状態は、ハラスメント被害者が通報した後や会社側が対応を完了した後にも継続する可能性が考えられます。
①から③のような変化は、第15回「指導の根拠をどう残すか」でご紹介した不調のサインの3K(効率、勤怠、感情)の例です。ハラスメントの有無に関わらず、管理職の方は本人に積極的に声掛けしていただいて、ラインケアを実践してください。
④や⑤の場合は、現場で対応する域を超えています。すみやかに社内の関係部署に報告し、対策を取ることが必要です。まずは自分の上司、さらに人事労政部門、産業医などと連携し、本人を含む職場の安全確保に努めましょう。
なお、ここで一つ触れておきたいのが、職場でメンタル不調に陥った人がいた場合、その原因が複合的だとすると、それぞれの影響の度合いを測るのは極めて難しい、ということです。例えば、業務が大変でダウンした人には、実は子どもの頃にいじめられた経験があった、という時に、仕事の負荷が不調に何パーセント影響したかは誰にもわかりません。メンタル不調の原因を追究することが、必ずしも建設的でないと言われるのはこのためです。「本当のところ、何が原因だったんでしょう」と現場の管理職の方からよく質問されますが、原因究明は専門職に任せて、職場のパフォーマンスのマネジメントに集中するよう心掛けてください。
(スーパーバイザー八木亜紀子、2025/5/20掲載)
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