【スーパーバイザーコラム】ハラスメント対応A to Z《第6回》

感情の波に気づくコツ

 ムカッとしたり、がっかりしたりした時、ちょっとした変化に気づくのは、実は非常に困難なことです。仕事上のやり取りでぎくしゃくする相手がいても、最初から怒りを感じたり何も言えずに落ち込んだりしていると気づくことは稀でしょう。多くの場合、感情の変化はそれが強くなって初めて自覚できます。日本語はもともと、感情を表す語彙が少なく、それを母語とする人にとってはなおさら、気持ちを認識することは難しいのです。

 前回は、自分のアンガースイッチが押されるきっかけが何か、傾向を分析しました(①)。今回は、気持ちが揺さぶられて上り坂(あるいは下り坂)を進み始めた時(②)に、いち早く気づくコツを考えてみましょう。

 

 ところで、感情と認知と身体と行動は互いに関連しあっています。危険を察知する(認知)と恐怖を感じ(感情)、心拍数が上がって全身に酸素がいきわたるので(身体)、普段以上の力を発揮して危機を回避できる(行動)、というように、それぞれの要素が連鎖反応して効率的に状況に対処するという仕組みが、人間には備わっています。なおその連鎖は、ヒートアップ(身体)すればするほど興奮して(感情)、「絶対逃げる(または相手を倒す)」という気持ちが強まる(認知)こともあるように、一方通行ではなく相互的でもあります。

 感情の変化にはなかなか気が付きませんが、それに関連する身体の変化は自覚しやすいものです。身体変化には、例えば次のようなものがあります

 □ 筋肉が緊張する
 □ 握りこぶしを握り締める
 □ 歯を食いしばる
 □ 手のひらに汗をかく
 □ 心臓が早く打つ
 □ 呼吸が速くなる
 □ 震えたりふらふらしたりする
 □ 暖かく感じたりカッとなる
 □ 胃が痛くなる
 □ 声高になったり脅すような声になったりする

 他にも、面談中につい腕組みしたり足を組んだりしている、気づいたらだんだん後ろに下がっている、といったことがある場合は嫌悪や恐怖を感じているかもしれません。反対に興奮や苛立ちを感じると、つい身を乗り出したり早口になったりすることもあります。

 自分の身体変化への気づきが高まると、感情を客観的にとらえるスキルが向上します。また、どんな時に身体変化が起きるかを分析することで、改めて自分のアンガースイッチに気づくこともあります。自分のからだが発する貴重な情報を、しっかりとキャッチするようにしましょう。

(スーパーバイザー八木亜紀子、2022/1/27掲載)

 

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