【スーパーバイザーコラム】ハラスメント対応A to Z《第20回》

外部者の攻撃から従業員を守るには①

 パワハラが広く知られるようになって以降、何かと○○ハラという言葉が聞かれるようになりました。すこし調べただけでも50近くの○○ハラがあるようですが、そのほとんどはセクハラやパワハラに含まれるか、職場として配慮が必要な範囲を外れるもののようです。

 そんな中、新たに注目されているのがいわゆるカスハラ、カスタマーハラスメントです。パワハラの防止対策が令和元年に法制化され、翌令和2年に対策の指針が示された際、顧客等からの暴行、脅迫、ひどい暴言、不当な要求等の著しい迷惑行為に関して、「事業主は、相談に応じ、適切に対応するための体制の整備や被害者への配慮の取組を行うことが望ましい」とされ、「被害を防止するための取組を行うことが有効である」と定められました(「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」(令和2年厚生労働省告示第5号))。

 この動きの背景には、カスハラの深刻化があります。流通・サービス業の労働組合が作るUAゼンセンが今冬組合員を対象に行った調査では、「直近2年以内に迷惑行為被害にあったことがある」という回答が46.8%、さらに「直近2年以内で迷惑行為は増えていると感じる」という回答は33.7%でした。「最も印象に残っている顧客からの迷惑行為」は「暴言」(39.8%/6,170件)が最多で、「威嚇・脅迫」(14.7%/2,281件)、「何回も同じ内容を繰り返すクレーム」(13.8%/2,140件)が続きました。

 気がかりなのは、「迷惑行為のきっかけとなった具体的な理由」の最多が「顧客の不満のはけ口・嫌がらせ」で26.7%だった点です。カスハラの4件に1件は、防ぎようがないとも言えます。一方で、「企業で実施されている迷惑行為への対策」については「とくに対策はなされていない」が42.2%で最多で、「マニュアルの整備」(28.6%)や「専門部署の設置」(23.4%)を大きくしのいでいます。

 つまり、企業のカスハラへの取り組みはまだまだこれからで、従業員の多くはいつその被害にさらされるとも知れない中、無防備に業務にあたっていると言えるでしょう。企業にとって、組織内の従業員が加害者となることが多いセクハラやパワハラと異なり、社外の客が引き起こすカスハラは対策が難しいのも事実です。しかし、現在検討されている労働施策総合推進法の改正に際して対策の義務付けが見込まれており、他のハラスメントと同じような体制整備が求められています。

col20_zuhyo.png※UAゼンセン「カスタマーハラスメント対策アンケート調査」結果
(速報・抜粋)
 https://uazensen.jp/2024/06/12/101142/(外部リンク)

(スーパーバイザー八木亜紀子、2024/7/23掲載)

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