【スーパーバイザーコラム】ハラスメント対応A to Z《第13回》

当人同士では気づけないハラスメント

 ハラスメントを受けたことも、やったこともない、というあなた。周囲の人に意見を求めても、答えは変わらないでしょうか。

 相談という仕事に携わっていると、ハラスメント被害を受けている人が、その自覚がないことの多さに驚かされます。被害者の方は何らかの理由でパフォーマンスが十分に発揮されていないことが多いので、「厳しく指導されても仕方ない」と自分を責める傾向が強く見られます。
 一方、ハラスメントを行っている人も、悪意があるのはごく一部で、指導がうまくいかずつい強めに言ってしまったり、場合によってはその「つい」さえ認識していなかったりする方がほとんどです。つまり、ハラスメントが発生している時、当事者だけでは問題に気づくことすら難しいのです。

 この背景には、被害者加害者それぞれの心理社会的要因が複雑に絡まりあっています。人間はパターンの生き物なので、それまでの人生経験が職場のコミュニケーションにも大きく影響します。しかし、それをすべて解き明かすには非常に手間暇がかかりますし、原因論を追求しすぎても、望ましい行動変容につながるとは限りません。職場全体の生産性を考えると、問題のある言動にばかり注目するより、それが悪化あるいは再発しない方策を考えた方が効率的です。これにはもちろん、職場に好ましくない言動への毅然とした態度と厳正なる対処が前提となります。
 コロナ禍の緊急事態宣言下でDVや虐待の件数が増加したことからも、閉鎖的な状況で問題が起きた時に、当人同士では解決できないことは明らかです。

 自分ではそのつもりがなくても、周りの声に耳を傾ける。周囲のやりとりに違和感を感じたら、まずは当事者意識をもって関わってみる。
 斜めの関係はハラスメント対策において極めて重要です。職場のコミュニケーションを、線から面に変えて、実効性のあるハラスメントへの取組みを進めましょう。

(スーパーバイザー八木亜紀子、2023/4/7掲載)

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