【スーパーバイザーコラム】ハラスメント対応A to Z《第16回》

指導で何を伝えるか

 厳しく指導しないと人は育たない。これはかつて、自分がそうやって育てられた世代にかけられた「呪い」の言葉です。

 厳しさが「精度(=what)」を指すのであれば、確かにクオリティを妥協しては、人は育ちません。しかし、往々にして厳しさは、声の調子や言葉遣い、つまり「伝え方(=how)」に結び付けられがちです。どなったり追い込んだりしないと人は育たない、という考え方は、パワハラ以前にいかにも非科学的な根性論です。

 厚労省が令和2年に示した、「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」、いわゆるパワハラ防止ガイドラインには、「客観的にみて、業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導については、職場におけるパワーハラスメントには該当しない」と明確に記載されています。つまり、必要な業務指示や指導は、適正に行うように、と改めて言われているのです。ということはやはり、whatは妥協せず、howで工夫することが求められているといえます。

 「指導のための“かきくけこ”」では、ハラスメントにならない指導のポイントとして、具体的に伝えることを上げています。

  か 「環境」を整える
  き 「記録」に基づく
  く 「具体的」に話す
  け 「傾聴」する
  こ 「これから」を明確にする

く 「具体的」に話す
 相手を傷つけまいとして、遠回しに注意するということは、よくあるかもしれません。ですがそれでは、注意された側は、何を正せばいいのかよくわからない、ということになってしまいます。場合によっては、改善のチャンスを奪うことにもなりかねません。そうしないためにも、できるだけピンポイントで具体的に伝えることが大事です。

 前回「き:『記録』に基づく」でご紹介した、不調のサインの3K(効率、勤怠、感情)を参考に、収集した情報をできるだけ具体的に伝えるようにしましょう。具体性を高めるために、客観的な指標を取り入れることも有効です。数字や日付を入れて、お互いの理解に齟齬が生じにくいようにしましょう。

 また、口頭だけで伝わりづらいようであれば紙媒体を、文字だけでわかりにくいようであれば図表を、使うなどして、本人が理解できる伝え方を工夫するようにしましょう。

(スーパーバイザー八木亜紀子、2023/11/24掲載)

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