【スーパーバイザーコラム】ハラスメント対応A to Z《第14回》

指導の環境をどう整えるか

 最近日本でもよく聞かれる「心理的安全性」は、アメリカの組織行動学者のエイミー・エドモンドソン博士がハーバード大学在学中にたどり着いた概念です。
 病院でのチームワークとミスの関係性を調べると、効果的なチームほどミスが少ない、という予想に反して、チームワークが良いと答えたチームの方がより多くの失敗を経験していることが分かりました。エドモンドソン博士は、「報告しても大丈夫」と思えるチームは、ミスを進んで報告していたのだと考えました(*)。その後、Googleが心理的安全性を、チームの効果性に最も影響する因子としたことは、良く知られています(**)。

 心理的安全性は、連載初回で紹介した、「指導のための“かきくけこ”」にもつながります。ここで改めて、詳しく見ていきましょう。

 か 「環境」を整える
 き 「記録」に基づく
 く 「具体的」に話す
 け 「傾聴」する
 こ 「これから」を明確にする

か 「環境」を整える
 失敗した部下を鼓舞するために、チームメンバーの前で指導。問題に気づいたら、忘れないうちに即メールやSNSで注意。
 今時こんなことをしていては即アウト、ということは、この連載を読んでくださっているみなさんはよくお分かりだと思います。他の労働者の前での叱責は、厚生労働省がパワハラのガイドラインでも示している、精神的攻撃の一例に該当します。メールでの注意も本人だけでなく「CC」にチームメンバー全員を入れて送ることは精神的攻撃の例としてガイドラインで挙げられていますし、SNSのやり取りはそのスピード感から「つい」「うっかり」が起きがちです。
 部下の心情を想像すると、呼び出された時点で構えていて当然です。指導の際は安心して話してもらうために、綿密に準備して環境を整えましょう。

1.プライバシーが守られる場所を確保する
 部下が話しやすいと感じられるよう、周囲に話がきこえない場所を選びましょう。個室が難しければ、パーテーションや離れたテーブルなどを使いましょう。
 電話やリモートでのやり取りの場合、相手が落ち着いて話せる環境にいるかどうか、また自分もゆっくり話が聴ける状況にあるか、合わせて確認しましょう。

2.時間に配慮する
 面談場面を設定する場合、しっかり話を聴ける時間帯を選びましょう。後の予定が気になると、会話に集中できません。
 また、時間の長さも重要です。お互いの集中力が持続する時間には限りがあります。無理に長く話そうとするより、しっかり話せる時間を確保しましょう。15分しか時間が取れないのであれば、冒頭に「今15分しか無いんです。でもその時間はあなたのお話を聴かせてください」と伝えることで、相手は安心して話すことができるでしょう。

Amy Gallo. “What Is Psychological Safety?” Harvard Business Review, February 15, 2023.
** Google. ガイド: 「効果的なチームとは何か」を知る - re:Work – Google.

(スーパーバイザー八木亜紀子、2023/6/2掲載)

前のページに戻る


ハラスメント防止

高い専門性と豊富な経験を持つプロの相談員によるハラスメント相談窓口。様々なハラスメントに関する貴社従業員からの相談をお受けします。

ハラスメント社外相談窓口サービス

相談対応のスキルを身につけていただく「ハラスメント相談担当者セミナー」を定期的に開催。経験やスキルに合わせたコース別のプログラムで効果的に学ぶことができます。

 ハラスメント相談担当者セミナー 

―こんな記事も読まれています―