【スーパーバイザーコラム】ハラスメント対応A to Z《第22回》

外部者の攻撃から従業員を守るには③

 最近東京都内では、スーパーや小売店で「当店はカスハラを許しません」という趣旨のポスターを見かけるようになりました。いよいよ、カスハラ対策が現場に広まってきていると感じます。
 自分の組織のカスハラ対策は、事前準備と、事案が発生した場合の対応に分けて考えましょう。東京都産業労働局は事前準備として、次の4点を挙げています1)

①事業主の基本方針・基本姿勢の明確化、従業員への周知・啓発
・組織のトップが、カスハラ対策への取組の基本方針・基本姿勢を明確に示す。
・カスハラから、組織として従業員を守るという基本方針・基本姿勢、従業員の対応の在り方を従業員に周知・啓発し、教育する。

②従業員(被害者)のための相談対応体制の整備
・カスハラを受けた従業員が相談できるよう相談対応者を決めておく、または相談窓口を設置し、従業員に広く周知する。
・相談対応者が相談の内容や状況に応じ適切に対応できるようにする。

③対応方法、手順の策定
・カスハラ行為への対応体制、方法等をあらかじめ決めておく。

④社内対応ルールの従業員等への教育・研修
・顧客等からの迷惑行為、悪質なクレームへの社内における具体的な対応について、従業員を教育する。

 ①の事業主の基本方針の明確化について、カスハラの判断には、業種や業態、企業文化によっても異なる場合があり、我慢を強いられてきた背景がある、とも言われています。カスハラ対策として、まずは組織の実態の把握を行い、自社のビジネスに合わせた基準を作って、組織内外に周知することが必要です。

 カスハラは業態がBtoBの場合とBtoCの場合で、その性質や経過が異なります。BtoBの場合は、関係者がある程度固定していると考えられるため、構造は組織内のパワハラやセクハラに近い構造で発生することが想定されます。つまり、被害は繰り返されることが多く、放置しておくと事態は悪化します。

 一方、BtoCの場合は関係者が不特定多数の場合もあり、自然災害のように突然発生して甚大な被害に至る可能性も否定できません。
 このため、実態の把握に際しては、すでに起きている被害だけでなく、組織の業態の特性を踏まえた事態の予測も必要だと言えます。

 ②相談対応体制の整備と③手順の策定については、すでに多くの企業が導入しているであろう、コンプライアンス対策やハラスメント対策を活用し、効果的かつ効率的に対応できるような体制づくりが望まれます。

 ④については、BtoBの業態とBtoCの業態で異なる教育内容が必要です。組織の現状と、目指す姿を見据えて、実用性の高い教育を提供しましょう。

1) 【参考】東京都産業労働局「TOKYO ノーハラ企業支援ナビ」職場でのハラスメント防止を学ぶ カスタマーハラスメント

(スーパーバイザー八木亜紀子、2024/11/13掲載)

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