【スーパーバイザーコラム】ハラスメント対応A to Z《第19回》

指導をどう次につなげさせるか

 怒ると叱るは違う、という声を、管理職研修の参加者から聞くことがたびたびあります。言いたいことはわからなくはないですが、ハラスメントを考える上ではあまり参考にはなりません。なぜなら、ハラスメントは、基本的には受け手がどう受け止めるかが問題であって、送り手の意図はあまり斟酌されないからです(明らかな悪意がある場合は、ハラスメント云々以前に加害行為です)。自分は愛情をもって叱ったつもりでも、相手やはた目には「怒っていた」と映るかもしれません。

 何より、「注意」されて気持ちのいい人はいないでしょう。それが自分を評価する立場の人から、となると、なおさらです。しかし、問題が解決しなければ指導する意味がありません。パフォーマンス改善に取り組めるよう、部下には希望をもって、前向きな気持ちで面談を終えてもらうことが重要です。

 「指導のための“かきくけこ”」では、ハラスメントにならない指導のポイントとして、具体的に伝えることを上げています。

  か 「環境」を整える
  き 「記録」に基づく
  く 「具体的」に話す
  け 「傾聴」する
  こ 「これから」を明確にする

こ 「これから」を明確にする

1.今後どう変えてほしいか、タイムラインとともに明示。
 問題点が共有できたとして、どうなればよいかを部下がイメージできていないこともあるかもしれません。職場でどういうパフォーマンスが求められているか、上司としてできるだけ具体的に伝えましょう。
 部下から、自力で何とかしたい、行動変容に取り組みたい、といった申し出があることもあるでしょう。その場合は、可能な範囲で猶予を明確に伝えて、部下の自発的な行動を尊重するようにしましょう。
 上司、部下とも問題改善に主体的に臨むために、スケジュール感を持ちつつ段階的に取り組みましょう。

2.注意しっぱなしにしない。
 せっかくダイエットしたのにリバウンドした、禁煙禁酒したのに気づいたら元に戻っていた、というのは、よくあることです。人間、姿勢が悪いのは良くないとわかっていても、ついつい楽な格好に戻ってしまうのです。
 フォローの面談までに部下のパフォーマンスが改善したとしても、面談自体をキャンセルしないようにしましょう。5分話を聴くだけ、「改善しましたね、今後も継続しましょうね」と一声かけるだけでも良いのです。悪いパターンに戻って一からやり直すことを思えば、メンテナンスに労力を割くのは実は非常に効率的です。
 何より、真摯な上司の関わり方は、部下にとって得難いお手本になります。個人にとって、組織にとって、長期的な投資と考えて、指導に臨んでみてください。

(スーパーバイザー八木亜紀子、2024/5/28掲載)

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